こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビザンチウム

otello2013-09-24

ビザンチウム Byzantium

監督 ニール・ジョーダン
出演 ジェマ・アータートン/シアーシャ・ローナン/サム・ライリー/ジョニー・リー・ミラー/ダニエル・メイズ
ナンバー 231
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

永遠の若さの代償は果てしない孤独。その秘密ゆえに人間とは心を通わせられず、同類からは追われている少女は、ノートに心情を綴っては破り捨てている。彼女が好意を寄せる少年は、難病で余命いくばくもない。映画は人目を避けて放浪するバンパイア母娘の関係が、新しい町での娘の恋によって壊れていく過程を描く。母みたいに強くはなれない、でも己の人生を選びたい、そんなヒロインの感情が切なく、時が止まったままの彼女の苦悩が浮き彫りにされる。限りある命だからこそ人は存在した証を残そうと懸命に生きる。しかし、望んでも死が許されない彼女たちの哀しみは、忘れ、忘れられることでしか癒されないのだ。

200年以上の時間を過ごしてきたバンパイアのクララとエレノアは、海岸の小さな町に流れつく。ある日、エレノアは白血病の少年・フランクと出会い、彼に自分の生い立ちを顧みた物語を読ませる。

普段は死を間近にした老人の血しか吸わないエレノアが、傷口から流れ出たフランクの血がしみ込んだハンカチをむさぼるようにすするシーンに、渇きに耐えきれない彼女の本性が見え隠れする。一方でクララは殺されて当然のポン引きか、彼女たちの正体を知った人間しか襲わない。かつて昼間は暗がりで息をひそめ、人間の敵として忌み嫌われていた怪物然としたバンパイアの面影はもはや彼女たちにはなく、死ねない苦痛にさいなまれつつも生き続けなければならない姿は、まるで自らを罰しているかのようだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてエレノアの書いた“自伝”は教師が目にするところとなり、皮肉にもその高い文学性が評価される。そこに記されたエレノアの誕生秘話は、あまりにも罪深く血なまぐさい。だがそれは彼女が求めてきた愛の軌跡でもある。死が甘美な誘惑に思えるほど祈りにも似た清らな映像、その中で血に染まった滝の赤が穢れた生を象徴する。そのコントラストが美しかった。。。

オススメ度 ★★★

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