こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アイ・ウェイウェイは謝らない

otello2013-10-10

アイ・ウェイウェイは謝らない

監督 アリソン・クレイマン
出演 アイ・ウェイウェイ
ナンバー 242
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

四六時中尾行・監視されているのに、逆にその状況を楽しんでいるかのよう。数億人のネットユーザーを味方にしているという心強さが彼の言動を支えている。映画は、北京五輪メインスタジアムとなった“鳥の巣”の建設に参加し世界的に有名になったアーティストの反骨心に満ちた日常を追う。役人の権限が非常に強く、ほとんどの人民は言論を制限されているのに不満を抱きつつも口にせず、考えないことにしている。そんな国で体制批判をやめない自分をジャンプしてドアノブを引く猫になぞらえ、自由社会へのドアを開けようとする。彼の闘いは、“活動家”の堅苦しさや悲壮感はなく、どこかユーモラスですらある。

四川大地震被災地で、手抜き工事の建築物の下敷きになって死んだ子供たちの遺品を目にしたアイ・ウェイウェイ。当局に犠牲者の名前の公表を迫るが、保安上の秘密と却下される。憤ったアイはボランティアを募って独自に調査を始める。

集めた子供の名をブログで公開した結果、公安にマークされたアイは、自らも張り込みの捜査員の顔写真を撮り、ビデオカメラを回し、彼らの様子を逐一WEB上にアップしていく。さらに警官に暴行を受けたと抗議文を提出し、地元警察相手に裁判まで起こす。権力に対しまったくひるまず、むしろ張り付いている捜査員に絡んでトラブルを起こそうとさえするのだ。だがアイの国際的な名声ゆえに、当局は彼の活動を認めざるを得ず強硬手段に出られない。西欧諸国の目を気にする中国当局の困惑を逆手にとるアイの抗議方法は痛快だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが2011年4月、アイはついに逮捕されてしまう。3カ月近い拘留の後釈放されるが、取材陣への口は信じられないくらい重くなっている。きっと痕跡が残らない方法で肉体的にも精神的にも痛めつけられ、追い詰められたのだろう。やはり中国4千年の官僚支配はそう簡単に変わるものではないと、改めて思い知らされた。。。

オススメ度 ★★★

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