こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラン・オールナイト

otello2015-05-19

ラン・オールナイト RUN ALL NIGHT

監督 ジャウム・コレット=セラ
出演 リーアム・ニーソン/ジョエル・キナマン/ヴィンセント・ドノフリオ/ニック・ノルティ/ジェネシス・ロドリゲス/コモン/エド・ハリス
ナンバー 113
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

罪の意識と孤独を紛らわせようと酒に溺れていた男は、家族のために汚れた世界に戻っていく。後ろめたさとは無縁の、無実の者を守る“正義”の戦い。後ろ盾も逃げ場も失い町中を敵に回したとき、彼は心の箍を外し、サバイバル本能と父性愛をむき出しにして現実に立ち向かう。物語はギャングのトラブルに巻き込まれた息子の命を救った殺し屋が、己の人生に決着をつける姿を描く。生活臭漂う下町の住宅地から宝石をちりばめたような摩天楼の夜景、混雑する地下鉄の駅や繁華街の雑踏まで、逃亡劇の舞台となるニューヨークの息遣いがリアルに再現されていた。いつ死ぬかわからないからこそ家族を大切にしている、男たちのそんな気持ちがやるせない。

裏社会のボス・ショーンに長年仕えてきたジミーは、息子のマイクがショーンの息子・ダニーに殺されそうになったところに遭遇、ダニーを射殺する。ショーンは子分と息のかかった警官を総動員してジミーとマイクの行方を追う。

ジミーを軽蔑しまっとうに暮らすマイク。ショーンの後継者として名を上げたいダニー。父の息子に対する思いは同じなのに、息子の態度は対照的だ。映画は二組の父子が抱える葛藤を通じ、どれほど深い信頼で結ばれていても、男の友情と親子の愛を天秤にかければ後者が勝ると訴える。損得勘定も理性も超越した感情、時に追い詰められた人間に思いがけない力を目覚めさせ、限界を超えた体力と精神力を発揮させる。何度も窮地に陥いるが決してマイクに引き金を引かせないジミーの、父親の責任感が頼もしくも切なかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もはや和解はない。立ちはだかるすべての敵を殺して生き残る。そう決意したジミーはショーンの組織を全滅させ、雇われた殺し屋と対決する。それはジミーにとって、初めての良心の呵責を覚えない正当な理由のある殺人。死に様を示すのは生き様を伝えることだとこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★

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