父はやさしくタフだった。母は聡明で強かった。妹も彼らと同等の能力を開花させる可能性を持っていた。そして自分は地球を守るヒーロー軍団の紅一点。物語は、そんな彼女の知られざる生い立ちを追う。あらぬ疑いをかけられ、どこに身を隠しても組織は追いかけてくる。同時に地球を破滅させる陰謀を止めなければならない。21年ぶりに再会した妹と共に引き裂かれた “家族” を再生させていく過程は、ミステリアスかつユーモラス。一方で彼女の前に立ちはだかる仮面の戦士が最高にクールだった。ただ、女はみな有能で洗練されているが、男は悪党か女の下僕的存在としか描かれていない過激な女性上位はかえって空々しく痛々しい。むしろ男女共生社会への障害となっている。そろそろハリウッドも、ヒステリックなフェミニズムから次の段階に進んでもいいのではないだろうか。
米国で逮捕されそうになったナターシャ一家はキューバに亡命、そこで家族はバラバラにされる。大人になったナターシャは “妹” のエレーナと再会、2人は “父” アレクセイの行方を捜す。
エレーナは狂気の科学者・ドレイコフに洗脳された女暗殺者集団・ウィドウの元メンバーで、任務中に催眠を解かれ正気に戻っている。エレーナからのメッセージを受け取ったナターシャは、僻地に収監中のアレクセイの救出に向かうのだが、高度な訓練を受けてはいるもののスピード感に欠ける2人のアクションはどこか薄っぺらかった。片手片膝を地についてうつむいた顔を正面に向ける、そのナターシャ得意の着地ポーズをエレーナがディスるシーンには笑ったが、格闘シーンに重量感が欠けているのはやはり物足りない。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
戦うよりも理解しよう、憎みあうより許し合おう。破壊と殺戮よりも、人命損失と環境への悪影響をできるだけ最小限にとどめようとするナターシャの努力は認める。ただ、圧倒的な強さを誇る仮面の戦士との決着だけはきっちりつけてほしかった。それが男の思考回路であることは重々承知しているが、やっぱり煮え切らない。
監督 ケイト・ショートランド
出演 スカーレット・ヨハンソン/フローレンス・ピュー/デビッド・ハーバー/レイチェル・ワイズ
ナンバー 124
オススメ度 ★★