こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ニンフォマニアック Vol.1

otello2014-08-27

ニンフォマニアック Vol.1 NYMPHOMANIAC: VOL.1

監督 ラース・フォン・トリアー
出演 シャルロット・ゲンズブール/ステラン・スカルスガルド/ステイシー・マーティン/シャイア・ラブーフ/クリスチャン・スレイター/ユマ・サーマン
ナンバー 191
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

愛なんかいらない、ただエクスタシーが得らればいい。幼くして性に目覚めた少女は、やがて己の肉体に価値があると知り、相手をした男の人数こそが勲章であるかのごとくセックスを続ける。それはもはや“愛し合う”とか“寝る”のではなく、率直に“ヤル”ことだけに特化した行為。アイコンタクトで下着を脱ぎ、硬直したペニスを受け入れ射精させる。精神的な高揚や至福に満たされるわけではなく刹那の刺激に身を委ねるのみ。物語は自らの性欲に忠実な少女が性欲に翻弄され“世間”から疎外されていく姿を描く。若さを魅力と勘違いし男を選別できる優越感に浸る彼女に、思いのままに生きたツケの請求書は、その特権を失ってから届くという人生の皮肉が込められていた。

暗い裏道で行き倒れている女を自宅で介抱するセリグマンは、ジョーと名乗る彼女から性遍歴を聞かされる。信じがたい身の上話に、セリグマンは文学的・科学的見地から意味を見出そうとするが、ジョーは意に介さない。

いくら隠そうとしても人間の本性は抑えきれず、時に理性を鈍らせて目の前の快感にひれ伏してしまう。列車の中でヤッた男の数を競うゲームの終盤、無賃乗車を助けてくれた紳士へジョーが強引に“お礼”をするシーンには彼女の傲慢さと“男の性”が凝縮されていた。また、ジョーに本気になってしまった男の妻が子連れでアパートに乗り込んでくるエピソードは、ジョーですら持て余すほどの妻のエキセントリックな行為の数々で笑いを誘う。嫉妬に追われ、狂気にも似たあてつけを連発しジョーをあ然とさせたこの妻を演じたユマ・サーマンが圧倒的な存在感を示していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

フライフィッシング、ファボナッチ数列、バッハ…。ジョーの過去にちりばめられた様々なサインから具体的な関連性を見つけ出し、彼女を分析しようとするセリグマン。だが、自分の話に反応するセリグマンをジョーも観察している。お互いの理解を深めるにつれ、ふたりとも今まで気づかなかった自己を発見していく過程はスリリングで象徴的だった。

オススメ度 ★★*

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