こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ニンフォマニアック Vol.2

otello2014-08-28

ニンフォマニアック Vol.2 NYMPHOMANIAC: VOL.2

監督 ラース・フォン・トリアー
出演 シャルロット・ゲンズブール/ステラン・スカルスガルド/ステイシー・マーティン/シャイア・ラブーフ/クリスチャン・スレイター/ジェイミー・ベル/ウィレム・デフォー/ミア・ゴス/ジャン=マルク・バール
ナンバー 192
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

世間を拒絶し、世間から拒絶された女は、自らの生き方を変えずますます孤立を深めていく。理解されなくてもいい、快感を得られれば。非難されてもいい、この生活を続けられれば。だが、加齢と性器の酷使は確実に彼女の肉体に変調をもたらし、もはや若いころのような回数をこなせないばかりか、感度も鈍る。それでもセックスに対する興味と欲望は尽きず、異言語のアフリカ人との乱交や挿入をしない行為にのめり込んでいく。奔放な性格のまま結婚、人の親になってもなおわがままは治らない。最低の人間だとわかっている、しかし矯正するくらいならそんな自分を肯定するヒロイン。“セクシュアリティは人間の本性”という彼女の言葉に、人生の真実を垣間見た気がする。

不感症になったジョーはジェロームと家庭を持ち、子供をもうけるが、一方でセックス依存症は強くなっていく。性器で感じない分、尻を鞭打たれる恍惚感に目覚めたジョーは、夜な夜な幼子を放置して秘密クラブに出かけていく。

相変わらずジョーの話から普遍的な解釈を導こうとするセリグマンは、逆にジョーから性交経験がないのを見抜かれる。文献から性に関する知識を蓄えてはいるが、性欲がないゆえにセックスの機会もゼロ。話させることでジョーの胸にたまった澱を取ろうとしたセリグマンが、いつしか彼女の“ヰタ・セクスアリス”に心を奪われていく。さらに博学を誇るセリグマンでもスパイ小説や拳銃の薀蓄ではジョーにかなわないなど、ふたりの関係に微妙な転換が見られ、お互いの腹の内を探るような心理戦の様相を呈してくる。この映画はセリグマンの本性を探す旅でもあるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて取り立て屋となったジョーは才能を開花させ、後継者を育てようとする。そこでまたしてもジェロームとの運命的な再会が待っている。3+5、意図しないセックス、1発の銃声。峻険な岩場の頂で強風にさらされて大きく斜めにかしいだ大木が、彼女の孤独を象徴していた。

オススメ度 ★★★

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