こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アップルシード アルファ

otello2014-12-11

アップルシード アルファ

監督 荒牧伸志
出演
ナンバー 279
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

崩れた壁、むき出しの鉄骨、放置された残骸や瓦礫……。世界大戦で荒廃した地上、生き残りのなかで純粋な肉体を持つ人間は少なく、ほとんどがサイボーグ化するか身体の一部を機械に置き換えている。それでも思考や感情は変わらないまま、人々は今日一日生きながらえようとさ迷い歩く。物語はそんな近未来、元戦士のヒロインと恋人が、守るべき大切なもののために命がけで銃を手にする姿を描く。裏切りと秘密が蠢く廃墟の中で誰を信じていいのかわからないまま戦闘に巻き込まれつつ、圧倒的な身のこなしで次々と危機を乗り越える彼女の肉体の造形は、もはやアニメーションとは思えないほど精細。実写映画かと時に誤解してしまうディテールの作り込みは、人間の俳優が演じるよりも繊細で表情豊かになる皮肉な効果を生む。

NYを牛耳るボス・双角の命令で自動兵器の破壊に向かったデュナンとブリアレオスは、偶然通りがかった少女・アイリスを救出する。アイリスは武装集団に追われる身、重大な使命を負った彼女に2人は力を貸す。

戦争は終わったのに相変わらず世界は暴力に満ちている。だがアイリスは平和の鍵を握っている。覇権を奪還しようとする集団・トリトンと伝説の理想郷オリュンポスから来たアイリス、殺し合いに倦んでいたデュナンとブレアレオスはふたつの勢力のはざまでなぜ戦うのかという問いを突き付けられる。使い捨てにされる傭兵稼業ではない、アイリスに自分たちと人類の将来を託し戦場に戻るデュナンとブレアレオスの雄姿は、希望こそ人を動かす原動力であると教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、混沌のNYで一応の秩序をもたらしている双角のキャラが際立っている。サバイバルのためには手段を選ばず時にデュナンたちと敵対するが、利用価値のある者は味方につける。その、徹底した現実主義的狡猾さと何度殺されても死なないタフネスが魅力的だった。ただ、デュナンは肘やひざにはプロテクターをつけているのに、巨乳を強調するような戦闘服を着ている。いちばん保護すべきは頭部や胸部のはずだが。。。

オススメ度 ★★★

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