こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

メビウス

otello2014-12-22

メビウス

監督 キム・ギドク
出演 チョ・ジェヒョン/ソ・ヨンジュ/イ・ウヌ
ナンバー 294
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

足の甲や腕の内側を石でこすると、血が滲み耐え難い痛みの後に至福の瞬間が訪れる。ペニスを失ってもなお快感を追い求め、自らの肉体を傷つける男たち。絶望に満ちた日常に一条の希望を探す行為であるが、性機能を奪われた男の悪あがきにも見える。もはや男ではない、それでも他人には知られたくない。嫉妬に狂った母、自分を犠牲にしてでも守ろうとしてくれる父、そして父の愛人。3人の大人たちの間で少年の心は混乱と自己否定の後に奇妙な悟りの境地に達する。物語は母にペニスを切り落とされた高校生が、理解できない運命の成り行きに流されるうちに家族の絆を再確認していく過程を描く。ただ、あらゆる予想を裏切る展開はセリフを排したために説明的になり、余計に登場人物の感情が分かりにくくなる悪循環に陥っている。

浮気した父の代わりに母によってペニスを切られた少年は、父の愛人だった女がチンピラにレイプされた現場にいたため逮捕される。

チンピラに促され女の股の上で腰を振る息子。秘密を知られたくないのか、息子は“やっていない”のに己の無実を認めず服役する。そんな息子のために父は己のペニスの切除手術を受け、移植手術や射精法を研究する。一方で女は出所してきたチンピラのペニスを切り取る。ペニスを奪う女たちとペニスを失くした男たち。ペニスに苦しめられてきた女の復讐とペニスの暴走を制御できない男の身勝手さ、その相克は朝鮮人的な“恨”の思想から発しているのだろう、愛ゆえの憎悪が強烈に反映されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、父のペニスを移植された息子は勃起力を回復させる。しかしそれは、文字通り不貞の父のシンボル、息子は女のところに行き、今度は本当にセックスに臨む。女は息子に接合された元愛人のペニスを受け入れようとする。彼女が愛したのは愛人のペニスだったのか、妻が憎んだのは夫のペニスだったのか。不当な扱いを受けるペニスたちが哀れでならなかった。

オススメ度 ★★

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