こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ガンパウダー・ミルクシェイク

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拳銃小銃機関銃からナイフ、ハンマー、トマホーク、チェーンまで、女たちはあらゆる武器や小道具を駆使して襲撃してくる男たちを血祭りにあげていく。そんな “女は正義で男は悪” という安っぽいフェミニズムを、構図と色彩・しなやかなアクションといった映像がスタイリッシュにまとめ上げていた。物語は、少女を救ったことからチンピラ集団に命を狙われる羽目になった女殺し屋が、仲間と協力して生き残りを図る姿を描く。銃の腕前だけでなく、ナイフや素手の格闘・運転技術にも秀でたヒロインは血の雨を降らせながら自らの手で未来を切り開く。ただ、自分がかかわった少女の命を守りたいと願って追手を振り払い、ギャングのボスに迫っていくのだ。その構造はすこぶるシンプルで、最近はやりの “悩み多きヒーロー” 像とは一線を画し、ストレートに感情移入できる。

ギャングのボスの息子を殺し上司にも見放されたサムは、人質の少女・エミリーと共に逃走する途中、生き別れた母と再会する。そして、図書館を隠れ蓑にする女3人組の元に避難する。

分厚い本をくりぬいて銃やナイフを保管している3人組がいかにも曲者ぞろいでユニークな雰囲気を醸し出す。簡単には他人を信用しない。けれど一度信頼を得ると最後まで面倒を見てくれる。義理と人情だけでなく母性愛にもあふれた彼女たちは、図書館に踏み込んでくる男たちには容赦なく鉄槌を下す。奸計を巡らせるのではなく、男たちと真っ向からの力勝負。銃口が火を噴き肉体から血しぶきが飛ぶ。死のダンスに彩られた銃撃戦・格闘シーンは洗練された様式美に昇華されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

女を主人公にしたバイオレンスものは、どうしても重量感やスピード感に乏しい。その分リアルさを追求せず、シルエットやモニター越し、スローモーションなどを駆使して補う。そういった世界観は過去の作品の模倣とも思えるが、キャラクターの性別を入れ替えるだけでなく、母から娘に受け継がれる “女の歴史” 的な視点も取り入れ、痛快かつ愛情に満ちた味わいを残す。

監督     ナボット・パプシャド
出演     カレン・ギラン/レナ・ヘディ/カーラ・グギーノ/クロエ・コールマン/ミシェル・ヨー/アンジェラ・バセット/ポール・ジアマッティ
ナンバー     54
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
https://www.gpms-movie.jp/#_song