こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

靴ひものロンド

妻はいつまでも昔の話を蒸し返し、夫はのらりくらりと話を逸らす。かみ合わない夫婦、でも気づいたらずっと一緒に暮らしている。物語は、夫の浮気が原因で崩壊した家族がギリギリの感情の中でバランスを保つ過程を描く。ふとした弾みで火遊びしたと漏らしてしまった夫。妻は重大な裏切りととらえ、ヒステリックに夫を追い出してしまう。事情が分からない幼い娘と息子は、おろおろしながらも両親の言動をしっかりと記憶に焼き付けている。やがて夫は愛人と暮らし始めるが、幸せそうな夫を見るたびに妻のフラストレーションはたまるばかり。子供たちの前ではいい父親でいようとする夫と、子供たちの前でも夫をなじり続ける妻。夫が娘に買ってきたプレゼントにしつこくケチをつける妻の執念深さが恐ろしい。

ナポリで妻・ヴァルダと娘・アンナ、息子・サンドロと暮らすアルドはラジオ局の番組に携わっていたが、ローマの愛人と暮らし始め週末だけナポリに戻るようになる。

怒りと嫉妬が沸点に達すると被害妄想を暴走させるヴァルダ。一度スイッチが入るとアルドはなすすべがない。こういう女と知っていたら結婚しなかったのにと後悔し、なるべく刺激しないように気遣っている。一方で愛人とのラブラブ生活でも余計なひと言でケンカになる。アルドの、鈍感さというか女心を全く理解しない身勝手さは男の愚かさを象徴していた。結局男も女も欠陥だらけ、彼らの振る舞いは、ある程度は我慢してお互いの気持ちを忖度することが、家族を長く続ける秘訣だと訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

アルドとヴァルダは復縁し、静かな老後を送っている。旅行に出かけることになって、飼い猫の面倒をアンナに頼む。それを機に、久しぶりに再会したアンナとサンドロ。ヴァルダの性格はアンナに、アルドの女癖はサンドロに遺伝している。どんなに取り繕っていても両親の関係を子供たちは敏感に感じ取り、同じ轍を踏んでしまう。理想の夫婦なんてフィクション、夫婦だからこそ隠し事が必要だとこの作品は教えてくれる。

監督     ダニエレ・ルケッティ
出演     アルバ・ロルバケル/ルイジ・ロ・カーショ/ラウラ・モランテ/シルビオオルランド/ジョバンナ・メッツォジョルノ/アドリアーノ・ジャンニーニ/リンダ・カリーディ/フランチェスカ・デ・サピオ
ナンバー     173
オススメ度     ★★★★


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