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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

忘れないと誓ったぼくがいた

otello2015-04-03

忘れないと誓ったぼくがいた

監督 堀江慶
出演 村上虹郎/早見あかり/西川喜一/渡辺佑太朗/ 大沢ひかる/池端レイナ/ちはる/ミッキー・カーチス
ナンバー 78
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

忘れないと誓ったのに、少年の記憶から彼女が消えていく。そんな馬鹿なと疑っても、いつしか忘れたことすら忘れてしまう。少女は、彼の頭の中から自分がフェイドアウトしていく寂しさをこらえつつ、黙って見つめているしかない。物語は大学受験を控えた高校生と、“他人に忘れられる”少女のひと夏の恋を描く。その過程で、つらい過去を秘めながらも喜びと感謝、絶望と哀しみを繰り返すヒロインの透き通った瞳が胸を締め付ける。そして奇跡なんて起きないと理解しているのに、やっぱりどこかで期待する彼女の複雑な心の動きを、早見あかりがぎこちない演技ながらも懸命に伝えようとする。認知症患者の感覚を逆転させた世界観はところどころに綻びも見えるが、人間を含むあらゆる物質は、他に観測者がいて初めて存在価値が生まれると教えてくれる。

夜の坂道で美しい少女・あずさと出会ったタカシは、翌日彼女が同じ高校の同級生と知る。あずさが秘密を打ち明けると、タカシはあずさとの出来事をスマホで逐一記録する。

“人は肉体的な死の後、誰からも思い出されなくなった時に本当の死を迎える”と思っているからこそ、誰もが生きた痕跡を残そうとするのだろう。だが、あずさがおかれているのは、肉体の死よりも先に“二度目の死”を経験し、しかもそれを知覚する精神と肉体は健康なままという皮肉で残酷な状況。まだ己が何者で何ができるのかも分からないティーンエイジャーにとって、その疎外感から来る苦痛と苦悩は想像を絶するもの。何度もタカシに「忘れないで」と念を押す彼女の姿は、痛々しいほど切実だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてタカシもあずさを忘れ始めるが、克明な画像と映像とメモはパソコンに保存されている。一方であずさはタカシの変化に耐えられなくなっていく。タカシの姉に“禁煙やめた?”と問うた時点でオチは読めたが、それでも好きな人と決して結ばれない運命ににあるあずさの繊細な感情が息苦しいまでに切なかった。

オススメ度 ★★*

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