こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スペシャルアクターズ

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敵は新興宗教を騙った詐欺集団。あの手この手で信者を集めて洗脳し、財産を巻き上げる。彼らに生家の旅館を奪われそうになった女子高生は、汚れ仕事もこなす裏役者集団に守ってほしいと訴える。物語は、ストレスにさらされると失神する役者が潜入調査を敢行、様々なトリックを使ってミッションを完遂するまでを追う。胡散臭い教義、洗練された集金システム、巧みな勧誘術etc. 孤独や不安、満たされない思いといった心の弱みに付け込む悪党たちの表裏の落差が笑わせてくれる。一方で、壮大な罠を彼らに仕掛ける役者集団も個性豊かな曲者ばかり。欺いたはずがハメられて、罠にかけたつもりが手のひらで転がされているだけだったり。相手の信用を得るために準備された二重三重のトラップ、畳みかけるようなアイデアの連続は先の読めない楽しみに満ちていた。

売れない役者・和人は弟の宏樹と偶然再会、所属するなんでも屋的俳優事務所に誘われる。折しも事務所に新たな依頼が入り、大掛かりなコンゲームの打ち合わせに和人も参加する。

根っからのビビりな和人はまずカルト集団・ムスビルのセミナーに申し込み、そこから信者が集まる集会にも顔を出すようになる。いかにもな教祖と立て板に水の弁者、インチキグッズ販売、和人はやっぱり気を失うが、同時に教団の重要な秘密を知り証拠のファイルを奪う任務のカギとなる。俳優事務所では収集したデータをもとに綿密なシナリオが練られムスビルの悪事を暴く作戦が立案される。役者らしく計画はすべて台本に沿って進められ、各人が割り振られた役割を完璧に演じ切ることでムスビルの幹部に騙されていると気づかれずに旅館を取り戻さなければならない。仕込みから駆け引き、第二第三のギミックとテンポのよい展開は「スティング」を彷彿させる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、全体に漂うチープ感は最後まで消えず、“嘘を本当に見せる作業を描いた虚構” というこの作品の命題の足を引っ張ていた。あと、最後の大どんでん返しは蛇足。全然 ”してやられた感” はなかった。

監督  上田慎一郎
出演  大澤数人/河野宏紀/富士たくや/北浦愛/上田耀介/清瀬やえこ/仁後亜由美
ナンバー  249
オススメ度  ★★


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