こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

108 海馬五郎の復讐と冒険

f:id:otello:20191101132256j:plain

妻の浮気を知ってしまった。不貞を働いたのは彼女なのに、離婚すると財産の半分を分与しなければならない。ならばそのカネを妻への裏切りに使ってしまおう。物語は、1か月の間に108人の女を抱こうと決意した男が湯水のごとく散財しながら性体験を重ねていく姿を描く。最初はありふれた風俗嬢だった。大衆店とはいえプロのテクニックに我を忘れたり、身の上話に萎えたりした。高級娼婦を指名しても気持ちばかり先走り、愛人とやっていた時のようにはいかない。そんな時現れた女優志望の若い娘。だが彼女とベッドに入っても気は休まらない。何を探しているのか、どんな結果を望んでいるのか。一切カタルシスを覚えることなく、ひたすらセックスした相手の人数にこだわる。不毛なセックスを繰り返す主人公の背中は滑稽を通り越して哀れだった。

脚本家の五郎はオーディションに落ちた女優・美月から妻・綾子がダンサーとの交際をSNSで綴っていると教えられる。綾子に問い質すと否定せず、彼女はダンサーの巡業についていってしまう。

浪費家の綾子にカネを取られるくらいなら己の放蕩に費やすのはいかにもクリエイターらしい発想で、その先に何が起きても五郎は創作の肥やしにするつもりなのだろう。風俗の経験値が低い五郎は1000万を使い切る術を持たない。しかし、“女を抱く” の定義が、単なるわいせつ行為まで含むのか、挿入したらOKなのか、射精して初めてカウントするのか、詳らかにされない。まあ、108回の射精は無理とは思うが。いずれにせよ、本来楽しむためのセックスを苦行のように自らに課し、五郎はどんどんやつれていく。その過程はまったく共感できず、女優の裸以外は見るべきところがなかった。今どき “膣痙攣” では笑えない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、デートクラブ経営者から様々なセックスを仕掛けられ五郎は応じるが、心は満たされない。一度に男女数十人が入り乱れるグループセックスを催したりもするが、上の空。すべて彼の妄想だったというオチではなかったのが救いだったが。。。

監督  松尾スズキ
出演  松尾スズキ/中山美穂/大東駿介/土居志央梨/栗原類/LiLiCo/乾直樹/堀田真由/岩井秀人/酒井若菜/坂井真紀/秋山菜津子
ナンバー  260
オススメ度  ★*


↓公式サイト↓
http://108-movie.com/