こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シン・仮面ライダー

顔面へのパンチはそのまま頭蓋を潰滅し、飛び散った脳漿はコスチュームを赤く染めた。ボディへのキックは致命的な一撃となって敵の息の根を止めた。いつの間にか身についた圧倒的なパワーと破壊力が信じられない。自分では適切に制御できない。物語は、他種生物の特性を埋め込まれた改造人間が人類の未来を狂わせようとする組織と闘う過程を描く。幸福とは何か、ラディカルな思想を実現しようとする組織と、さらに強大な改造人間との間で繰り広げられるバトルは、我々はなぜ生まれ人生にはどんな意味があるのかを問いかける。もはや善とか悪ではない、時の政権の意向に沿うかどうかが問題にされるだけ。混迷を深める21世紀の価値観の中で己のアイデンティティに苦悩する主人公の姿は多様性に満ちた現代を象徴する。

ショッカーを裏切った本郷とルリ子は、政府機関の依頼を受けオーグと呼ばれる改造人間を次々と粛清していく。だが、蝶オーグ・イチローは本郷以上の戦闘能力を持つ刺客・一文字を放つ。

バッタオーグである本郷は四肢の筋力に優れ、体躯も頑丈。クモやコウモリのオーグをあっさり蹴散らし、人心を操るハチオーグにも政府機関の男たちの加勢で完勝。その際、敵のアジトに飛び込む本郷と綿密に計画を立ててから行動するルリ子は対照的だ。このあたりの質感や戦闘シーンのぎこちなさ、特撮の見せ方など、オリジナルのテイストにこだわった映像は懐かしさを覚える。一方で、蝶オーグとの最終決戦は新鮮さに欠け、驚きは乏しい。池松壮亮森山未來というダンサーとしても一流の俳優同士を戦わせるのなら、舞うように跳躍するように優雅な中にも繊細で複雑な感情がこもったバトルシーンにできたのではないだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

イチローの子分だった一文字は寝返って、本郷と共にイチローと闘う道を選ぶ。このあたり、ディテールを省いて展開を急ぐあまり説得力に欠け、元ネタを知らないと難解かもしれない。政府機関の2人の男が「君の名は。」なのは、わかる人にはわかると言いたいのだろうか。

監督     庵野秀明
出演     池松壮亮/浜辺美波/柄本佑/西野七瀬/塚本晋也/手塚とおる/松尾スズキ/森山未來
ナンバー     48
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://www.shin-kamen-rider.jp/