人が抱く恐怖を餌にパワーを増していく純粋な悪意。何が目的なのか、なぜそこにいるのか。死と絶望にとりつかれた妄想が具現化したような “それ” は再び現れて人々を襲い始める。物語は、27年前に7人の少年少女たちが愛と友情で退治したはずのピエロが再起、大人になった彼らが運命に決着をつける姿を描く。故郷に残って “それ” の研究を続けていた男以外は、みなその出来事は封印している。でも交わした誓いは絶対に忘れていない。関わりたくない者、責任を痛感している者、逃げた者、さまざまな思いが交錯する中で少しずつあの頃に戻っていく。確かに血なまぐさく忌まわしい体験だった。それでもあの時にしか持てなかった思いやりや信頼といった感情はずっと心の奥で生きている。そんなノスタルジーを感じさせるホラーだった。
不可解な死亡事故が続発、地元に残ったマイクはペニーワイズの再来を確信し、かつての仲間に召集をかける。中年の域に達した彼らはレストランで旧交を温めるがおぞましい集団幻覚を見る。
作家・脚本家として成功しているリーダー格のビルはマイクと共にペニーワイズの弱点を探る。もう怯えているだけのガキじゃない、きちんと対策を練れば奴を攻略できるのはわかっている。だがそれは命がけのギャンブルでもある。彼らはそれぞれが大切にしている思い出を持ち寄り、火にくべることで過去に決別し、ペニーワイズの力を殺いでいく。その際、よみがえる27年前の記憶、それらは時に歪んでいて現実を侵食してくる。不良っぽい少女だったベバリーがラブポエムの差出人を勘違いしていたエピソードはまさに過ぎ去りし少年少女時代の甘く切ない蹉跌。“負け犬クラブ” メンバーだった彼らにとって、むしろペニーワイズは必要な通過儀礼だったのではないだろうか。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがて集結した6人はペニーワイズが待つ巨大地下空洞で最終決戦に臨む。そこで試されるのは勇気と絆。打算などない、子供のころのような対等な友人としてお互いを意識する関係がうらやましかった。
監督 アンディ・ムスキエティ
出演 ビル・スカルスガルド/ジェームズ・マカヴォイ/ジェシカ・チャステイン/ビル・ヘイダー/イザイア・ムスタファ/ジェイ・ライアン/ジェームズ・ランソン/アンディ・ビーン
ナンバー 262
オススメ度 ★★★