こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハロウィン KILLS

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子供たちがはしゃぎ大人たちはお祭り騒ぎの夜、その男はどこからともなく現れ、無差別に無慈悲に彼らを切り裂いていく。物語は、地獄の炎の中から復活した連続殺人鬼と戦う人々の人間模様を描く。ナイフで切り付けても突き刺しても怯まない。銃弾を何発ぶち込んでも死なない。元は不幸な生い立ちの少年だったのだろう。だが、自分を取り巻く環境への恨みが、彼を純粋な邪悪に育て上げ不死身の怪物にしてしまった。その恐怖は伝説となり、住人の記憶に深く染みついている。もはや和解も更生もない。怒りと憎悪をぶつけ合う過程は、暴力をふるう者には多数が協力して腕力で押さえつけるしかないと訴える。マスクの下の表情が読めない大男は、圧倒的な経済力で世界の市場と政治的秩序を乱し続ける中国のメタファーなのだろうか。

炎のトラップにブギーマンを追い込んだローリーは、火事現場で消防隊が全員惨殺され、ブギーマンが逃走したと知る。ブギーマンは自宅に戻る道中で出会った市民を見境なく血祭りにあげていく。

町では住民が病院に立てこもり、ブギーマン捜索隊が組織される。ところが、素人が手にする武器などブギーマンにはまったく通用せず、ひとりまたひとりと返り討ちにあう。ブギーマンは特に身体能力に優れているわけでもなく、ナイフを相手の体に突き立てるだけ。特に音響や音楽で驚かすわけでもなく、淡々と殺し続けるブギーマンの姿は孤独や絶望といった感情すら感じさせず、理解の範疇を越えた存在故の崇高さがうかがえた。濡れ衣の男を追い詰める群集心理の方がよほど恐ろしい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて捜索隊に包囲されたブギーマンは袋叩きにされる。殴られ蹴られ地面にはいつくばってもなお踏みつけられるブギーマン。集団リンチしたうえで死刑にしたい捜索隊の気持ちもわかる。それでも、憎しみに駆られた群衆がたったひとりをなぶり殺しにしようとする画はあまり愉快にはならない。まあ、ブギーマンはこの程度ではくたばらないことが明快だから、奇妙な安心感はあったが。

監督     デビッド・ゴードン・グリーン
出演     ジェイミー・リー・カーティス/ジュディ・グリア/アンディ・マティチャック/ジェームズ・ジュード・コートニー/アンソニー・マイケル・ホール
ナンバー     200
オススメ度     ★★*


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