こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロボット2.0

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野鳥の数が激減している。通信技術の発達で乱立した電波塔から発せられる電磁波が鳥たちの脳機能に影響を及ぼし、鳥たちから空を飛ぶ自由を奪うのだ。物語は、携帯電話の利用を制限しようと運動を起こすが誰にも相手にされず憤死を遂げた鳥類学者が、社会に対して壮大な復讐を試みる姿を追う。人として生きている間は無力だった。だが、肉体の軛を解き、殺された鳥たちの魂と融合した彼は無敵の存在となる。道路でオフィスで家庭で雑踏で人々の手からスマホが勝手に飛び立ち、無数のスマホが群れになって空の彼方に飛び去っていく場面は、現代人がいかにテクノロジーの奴隷になっているかを皮肉る。そして、スマホ集合体がさまざまに形を変え自然の摂理を破壊する人間たちに鉄槌を下すシーンは、その残酷さが強烈なインパクトだった。

インドの大都市からスマホが消え、巨大な怪鳥の形になって戻り、鳥を死なせた男たちを血祭りにあげる。怪鳥は軍隊でも歯が立たず、バシー博士は自作のロボットで対抗する。

バシーとそっくりなロボット・チッティは2.0にバージョンアップされ、戦闘能力も向上している。ところが、自在に形状を変化させるスマホ怪鳥には分が悪い。大量生産に成功したチッティ数百体を集合体にしてスマホ怪鳥と戦わせるクライマックスは、ディテールにまで神経の行き届いた刺激的な映像に思考停止状態に陥ってしまう。圧倒的な視覚効果とサウンドは、細密なCGのたまもの。インド映画界の技術力・表現力の高さがうかがえる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、鳥を愛し絶望のあまり首を吊り怨念の塊となった鳥類学者の身の上話を始め、あらゆるエピソード・シークエンスが “微に入り細を穿つ” を繰り返し、過剰なまでに説明的。多民族多宗教国家ゆえ、どんな階層の人が見ても理解できるための気づかいなのは納得できるが、ここまで念押しのように描かれると食傷気味になってくる。余分なショットを削ればあと40分は上映時間を短くできたはずだ。ハリウッド流で編集すれば引き締まった印象になったかもしれない。

監督  シャンカール
出演  ラジニカーント/アクシャイ・クマール/エイミー・ジャクソン
ナンバー  264
オススメ度  ★★*


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