こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

極限境界線 救出までの18日間

自国民が無法国家で拉致された。テロリストの要求は派遣部隊の撤退と仲間の釈放。地元政府は頼りにならず国際組織も無力。物語は、タリバン支配地域で誘拐された韓国民間人を救出するために奔走する外交官と工作員の友情を描く。正式な外交ルートでは埒が明かない。大きな影響力を持つ部族の有力者に仲介してもらうには、優秀な通訳とカネが必要になってくる。現地事情に精通した工作員は、いちいち上司の許可なしでは動けない外交官を尻目に自らのコネクションをたどってテロリストに近づいていく。さらに、暗躍する身代金詐欺師。誰が信用でき誰が敵なのか。言葉が通じない荒涼とした土地で、外交官は焦燥だけが募り、工作員の士気も下がっていく。それでも一縷の望みにかける彼らの熱いまなざしは仕事に人生を懸ける男たちの誇りに満ちていた。

布教活動中の23人が拘束され韓国政府に要求が突き付けられる。交渉の責任者として赴任したチョンは、人質の安全を最優先にする方針を立てる。一方、国家情報院はデシクを現場に投入する。

自分たちの行為を客観的にチェックすることなく正しいと信じ込み、渡航禁止区域に入り込む愚かな布教団体。タリバンや部族長に隠していた団体の目的を暴くTV局員。危機に対して無自覚な輩の軽率な行動が事態を悪化させ、政府職員が抱える難題をさらに複雑にする。ただ、チョンの放送中止要求をきっぱりと断ったTVディレクターの判断は、報道の自由を守り責任の所在をはっきりさせる意味でも正しい。対応が後手に回りいら立ちを隠しきれないチョンの感情をファン・ジョンミンがリアルに再現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

テロリストとの交渉は恥ととらえる政府と人命の板挟みになって葛藤するチョン。汚名返上をしたいデシク。2人は最後の賭けに出る。もはやだれからも命の保証はしてもらえない決死の任務、それでも最後まで己の意志を曲げずチョンはテロリストから譲歩を引き出す。他人を救うためには死を恐れない者こそ生きる価値があるとこの作品は教えてくれる。

監督     イム・スルレ
出演     ファン・ジョンミン/ヒョンビン/カン・ギヨン
ナンバー     175
オススメ度     ★★★★


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