こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

はりぼて

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廊下から階段を歩く間つきまとい、マイクを突き出してコメントを取ろうとするレポーター。ずっとごまかしてきたネコババを糾弾され一瞬表情がこわばるが、すぐに思い付きの嘘でその場をやり過ごそうとする議員。カメラは地方TV局のレポーターと記者に密着、市会議員たちによる政務活動費流用事件の顛末に斬り込む。不正について直撃されると、とりあえず知らぬふりをする。証拠を突きつけられると最初はとぼけ、責任転嫁しようとし、もう逃げられないと観念すると苦しい言い訳を並べ立てる。果ては記者会見を開いて土下座パフォーマンスまで披露する。膨大な文書資料のコピーを精査する記者の粘りと、舌鋒鋭く質問を繰り返すレポーター。2人が“税金を盗む”ことに慣れてしまった老人たちを詰問し遣り込める姿は小気味よい。

自民党会派が圧倒的に主流を占める富山市議会。議会のドンと称される自民党・中川の政務活動費疑惑を調査する五百旗頭と沢田は、綿密な取材を重ねて次第に中川を追い詰めていく。

議員報酬引き上げ案で議会と市長・第三者委員会に根回ししていた中川は、一方で領収書を改ざんし架空会合や印刷物の経費を計上している。開示された領収書の日付と金額をチェックして矛盾点を衝き、五百旗頭たちは中川を辞職に追い込む。また、カラ出張を指摘された議員の子供だまし的な言い逃れはもはや失笑すら催す。支援者からは先生と呼ばれ市役所職員の前ではふんぞり返っている。なのにせこい犯罪に手を染める議員たちの “小物ぶり” が人間の本質を見ているようで非常に滑稽だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、中川の後を継いだ五本をターゲットにする五百旗頭と沢田。しかし、五本は彼らの追及をのらりくらりと躱す。他の不正議員たちも居直る術を身につけ、詐欺等で刑事告発されても刑が確定するまでは辞めないと宣言する。そして人事での露骨な報復。これはジャーナリズムの敗北なのか、五百旗頭や沢田にもっと大物の醜聞を狙えという天の配剤なのか。ふたりの今後の活躍に期待したい。

監督  五百旗頭幸男/砂沢智史
出演 
ナンバー  120
オススメ度  ★★★*


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