こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

mid90s ミッドナインティーズ

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ルールに縛られず生きているところがまぶしかった。スピードに乗って技を競う瞬間が楽しかった。物語は、反抗期に差し掛かった少年が、家族以外に初めて居場所を見つけ、様々な体験を通じて成長していく姿を描く。不良たちが、意味のない下ネタや与太話で笑い、タバコをふかし酒を煽る仕種がイケていた。勧められ試すうちに、自分もクールになった気がした。母親は理解してくれない。兄は暴力で抑え込もうとする。でも彼らはどんな時も陽気に迎え入れてくれる。主人公はスケートボーダーが屯するショップに入り浸るうちに、母子家庭では身につかない人間関係の機微と距離感を学んでいく。家に帰る前にタバコの臭いを必死で消そうとする少年の、まだ母を恐れ敬っている気持ちが残っているあたりが健気でかわいかった。

口うるさい母・粗暴な兄と暮らすスティーヴィーは不満だらけの日常を送っていた。ある日、スケボーショップに集まる年上の若者たちのテクニックを見せられ、憧れを抱くようになる。

最初に仲良くなったルーベンにスケボー界隈のイロハを教えてもらったスティーヴィーは、ジャンプ技で無鉄砲な勇気を見せたことからリーダー格のレイやお調子者のファックシットに認められ、新しいボードをプレゼントされたりパーティでノリ任せて酒を飲みセックスしたりする。またたく間にボーダー的ライフに染まったスティーヴィー、ところが彼にポジションを奪われたルーベンは面白くない。仲の良かった2人が険悪になっていく。このあたり、手あかのついた青春と友情の一コマに終わらせない奥行きを持たせていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

レイはプロボーダー、愚鈍なフォースグレードは映像作家を目指している。ファックシットとルーベンは親との折り合いが悪い。彼らもそれぞれに事情を抱えている。レイは純粋なスケボー愛を持つが、他の者にとってスケボーは何かへの抵抗。自由に振舞っているようでしがらみから逃げている。そんな彼らの真実を知ったスティーヴィーの、少し成長した笑顔がたくましかった。

監督  ジョナ・ヒル
出演  サニー・スリッチ/キャサリン・ウォーターストン/ルーカス・ヘッジズ/ナケル・スミス/オーラン・プレナット/ジオ・ガリシア
ナンバー  150
オススメ度  ★★★


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