こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミッドウェイ

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無線を傍受して暗号を解読する。勝敗の鍵はその任務に就く兵員の質と量の差、攻めているつもりが相手の懐に呼び込まれ大いなる痛手を負う。物語は太平洋戦争の始まりから帰趨を分けた海戦までを描く。諜報と航空機がこの戦争を左右すると見抜いていた米海軍と、空母の重要性に気づきながらも戦艦を主力とする日本海軍。まだレーダーもGPSもない時代、大海原を行く空母から発進した軍用機は乗務員の視力を頼りに目標物を探し出さなければならない。その際、優秀な情報部員の進言が米軍パイロットたちの命を救う。一方、性格に問題のある指揮官を頂く日本海軍の内情は厳しい。それでも、「大和魂」や「神風」といった非合理的な言葉を口にする将校は一人もおらず、連合艦隊司令長官への理解も深い。このあたり、ローランド・エメリッヒ監督の日本に対する敬意が感じられた。

緒戦で大成果を上げた日本海軍だったが、東京空襲を機に米軍の士気も上がる。そして日本軍の攻撃目標がミッドウエイと知った米軍は迎え撃つ準備に取り掛かる。

燃え盛る戦艦の間隙を縫って機銃掃射を仕掛けてくるゼロ戦。離艦に失敗し海に墜落、そのまま空母に押しつぶされる偵察機。無数の対空砲火をかいくぐりながら急降下し空母の甲板に爆弾を見舞う雷撃機。また、胴体着艦をして海に落ちそうになる戦闘機や滑ってくる魚雷を抱き止めようとする海兵などもいる。スペクタクル満載の戦闘から小さなエピソードまでディテール豊かに表現された映像は、「戦争」という大枠ではなく生身の人間同士の「戦場」を非常にリアルに再現し、その緊迫感を体感させてくれる。陸軍と違って敵の顔が見える遭遇戦は少ない。だからこそ、CGの出来がいいほどバトルゲームのような感覚に陥ってしまう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

史実に忠実な結果、全体的に総花的な展開になっている。それは空母と航空機による戦術が主流になった太平洋戦争はわかりやすいヒーローを生みにくくなったということだろう。飛龍艦長の山口少将が艦と運命を共にするシーンにいちばんのヒロイズム覚えた。

監督  ローランド・エメリッヒ
出演  エド・スクレイン/ルーク・クラインタンク/ウディ・ハレルソン/デニス・クエイド/パトリック・ウィルソン/豊川悦司/浅野忠信/國村隼/アーロン・エッカート/ルーク・エヴァンス
ナンバー  153
オススメ度  ★★★*


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