こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

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鏡像のように空を映す水面はまるでウユニ塩湖。一点の迷いもない善を象徴する彼の魂は、どれほど邪な思いを抱く者でも穢すことはできない。むしろ浄化され、かつて持っていた人間らしい気持ちを取り戻していく。物語は人を食らう鬼たちを退治する使命を帯びた少年とその仲間の奮闘を追う。敵は夢を操り、睡眠中の精神を内部から狂わせようとする。幸福な夢に浸っている者は、隙を見せた瞬間精神の核心を破壊される。その攻撃を打ち破るには圧倒的な精神力で甘い誘惑を断ち切るしかない。そんな状況でも主人公は良心を信じ、敵にすら無制限のやさしさを注ぎこんでいく。それはまぎれもなく、愛。まだまだ修行中の身で剣捌きも戦術も未熟だが、なによりも人の命を大切にする彼の雄姿は救世主の風格すら漂わせていた。

鬼が出没するという無限列車に乗り込んだ炭治郎、伊之助、善逸の3人は、鬼殺隊の柱のひとり・煉獄と合流する。さっそく眠りの血鬼術を掛けられた4人は、夢の中で刺客に狙われる。

たとえ夢を見ている間でも危険を感じた時は肉体が勝手に反応し、夢の中のアバターではなく刺客本体を無力化する煉獄。鍛錬のたまものとはいえその能力は驚異的、柱は肉体的にも精神的に超人的でなければ務まらない。善逸や伊之助も特殊な性格ゆえ難を逃れる。ひとり炭治郎だけは家族の思い出にふけってしまい少しずつ追い込まれていく。人としての美徳が、鬼たちに付け入るスキを与えるのだ。それがわかっていても考え方を変えない炭治郎は傷だらけになっていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

血鬼術の本体・魘夢を見つけた炭治郎は決戦に挑むが、魘夢は列車自体と同化して乗客を襲う。1人の犠牲者も出さないように気遣う炭治郎は、親きょうだいの美しい記憶まで穢した魘夢は許せないが、彼の傀儡だった乗客乗員は救ってやる。ただ、炭治郎の心の広さを描くのに、ヴィジュアルのみならず独白と音楽まで総動員する映像は、いくら小学生を対象としたわかりやすさを売り物にしているとはいえ、説明的になりすぎていた。

監督  外崎春雄
出演  花江夏樹/鬼頭明里/下野紘/松岡禎丞/日野聡/平川大輔
ナンバー  178
オススメ度  ★★*


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