こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生

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目は霞み、耳も遠くなっている。でも体はまだまだ元気で好奇心も衰えていない。カメラは90歳を過ぎて小学校に入学した老婆の学校生活に密着する。校長も先生もみな孫と同じ年代、同級生はひ孫かさらに若い。そんな環境で彼女は寄宿舎生活をして教室で机を並べる。授業はそれこそ小学1年生の内容、簡単な算数や国語の文法なのだが、やはり学んだ経験のないまま過ごしてきた身には難しい。先生たちも他の児童より気を使い、彼女に教えている。だがケニア人の民族性なのだろうか、いつしか80歳以上年下のクラスメートと勉強している姿が自然に見えてくる。さらに彼女は女の子用の寄宿舎建設のために校長に働きかけていたりもする。効率や物質では測れない豊かな人生、ゆっくり流れる時間こそが彼らにとっての財産だと思わせてくれる。

新学期が始まると、トラックの荷台に乗って寄宿舎に入るゴゴ。小学生たちは二段ベッドだが、ゴゴには個室が与えられている。教室では一番前の席に陣取り、先生に特別目をかけてもらっている。

学校行事で、児童たちがバスに乗って旅行に出る。地平線まで広がる大草原、道中キリンや象、ライオンまですぐ近くで見学する機会を得る。ゴゴにとっては見慣れた風景でも子供たちには初めての体験。野生動物との接近遭遇にはしゃぐ子供たちの中で、ひとり達観したようなゴゴのたたずまいが印象的だった。その後、他校の児童たちと交流したりするが、やはり無邪気な子供のようにはいかないのか少し遠慮がちに見えた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

完成が遅れていた寄宿舎も無事落成式が行われ、彼女は立役者として校長から感謝されたりする。一方で勉強ははかどらず、試験の出来は芳しくない。学期が終わり村に戻ったゴゴはもう学校をやめると言い出す。しかし、彼女が白内障であると見抜いた校長のおかげで、無事視力を取り戻す。その過程で、教育を受けなかったことで不利益を被ったはずのゴゴの半生について突っ込んでほしかった。知りたいのは、彼女は何者だったのかということなのだから。

監督  パスカル・プリッソン
出演  プリシラ・ステナイ
ナンバー  4
オススメ度  ★★*


↓公式サイト↓
https://www.gogo-movie.jp/