幼馴染の男子よりも中学の時まではうまかった。なのに高校で身長も技量も抜かれた。やっぱり女子は体格で劣り、スピードもパワーも男子にかなわない。でも、プロ野球選手になるという意志に妥協はない。物語は、高校の野球部で投手を務めた女子選手がプロ球団のトライアウトに挑戦する姿を描く。誰も本気にしてくれない。トライアウトも最初は門前払い。それでも、毎日夜遅くまで自主練していると力になってくれるコーチが現れる。球速はいくら努力しても伸びない。ならば変化球で勝負と握りを変えてみる。階段をしゃがみ歩きで昇りボールが血に染まるまで投げ込む。努力と根性を前面に出し己を追い込む彼女の闘いは、“スポーツを楽しむ” などと口にするアスリートとは違う悲壮感が漂い、「巨人の星」のテーマ曲を思い出させるほど古風だ。
“天才少女” と呼ばれたスインは卒業後にプロを目指すと周囲に宣言、部活動引退後も練習に励む日々。新任コーチ・ジンテは彼女の夢をかなえるために伝手を頼ってトライアウトを受けさせる。
スインの父は失業中で、両親は野球を続けさせる余裕はない。カツカツの生活に母は就職させようとする。せっかく練習したナックルもあっさり打たれ、一度は心が折れるスイン。だが、工場勤めは自分に合わないとすぐに投げ出してしまう。そして母やコーチが見守る前で、キャッチャーが捕れないほど磨き上げたナックルでプロの選手から三振を取る。彼女の愛用はデサントのウエアにZETTのグローブ、韓国野球界では日本製品不買運動が起きていないところに妙に安心した。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
男たちをきりきり舞いさせる荒唐無稽な展開にせず、リアリティを重視した画作りは説得力がある。ただ、やっぱり性別の壁を乗り越えるのは無理を感じる。政治やビジネスの世界では男女平等が叫ばれ、女性を一定の割合で組織の構成員にしなければならなくなった。野球やその他の団体球技もそのうちプレーヤーのうち何割かは女子にするなどというルールができるかもしれない。見たくないけれど。。。
監督 チェ・ユンテ
出演 イ・ジュヨン/イ・ジュニョク/ヨム・ヘラン/ソン・ヨンギュ/クァク・ドンヨン/チュ・ヘウン
ナンバー 37
オススメ度 ★★★