こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

NO CALL NO LIFE

f:id:otello:20210309105942j:plain

学校帰りの夜道、ふと見つけた蛍を追うふたり。飛び続けながら短い命の炎を燃やす、そのはかない光に自分たちに重ねている。物語は、親の愛を知らずに育った高校生男女が強烈にひかれあい、生き急ぐように恋をする姿を描く。スマホに残された過去からのメッセージは届かなかったSOS、現在の彼女は彼と出会ったことで償いをしようとする。彼女が受け取ってくれたと知らずに、彼は好意を抱いてしまう。決して偶然ではない、運命のいたずら。お互いが足りないところを補い合うのではなく、似た者同士が心に欠落を抱えたまま走り出す。止めてくれる大人はいない。小さなアパートで息をひそめるふたりは、どん詰まりの未来しかない若者の切なさに満ちていた。

高校3年の有海は不良と噂されている春川と知り合う。春川は同じ高校の違うクラス、春川に強引に誘われるうちに有海は彼のマンションに泊まるようになる。

豪勢な部屋にひとりで住んでいる春川は母親からカネをせびって暮らしている。もともと母親としての責任は放棄していて春川に対する愛情はない。すさんだ生活をしている割には飲酒喫煙程度の不良、そんな春川に似ていると、有海はいとこに言われる。そして思い出してしまった封印していた記憶。やはり春川と同類だと気づいた有海のショックは、一方で初めて理解しあえる人に会った喜びでもある。触れるだけで壊れてしまうほど繊細な有海の感情がリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

はずみで教師を刺してしまった春川は有海と逃亡、空き家になっている小さなアパートで息をひそめて暮らし始める。すぐに警察に見つかるのはわかっている。それでもあえて考えないで一緒にいる瞬間を大切に寄り添うふたり。悪あがきは精いっぱいの抵抗、居場所のない彼らの気持ちが痛切だった。

監督  井樫彩
出演  優希美青/井上祐貴/犬飼貴丈/小西桜子/山田愛奈/駒木根葵汰/桜井ユキ
ナンバー  38
オススメ度  ★★*


↓公式サイト↓
http://nocallnolife.jp/