こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

AVA エヴァ

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完璧なミッションだったはずなのに誰かがミスをした。気が付くと敵だらけ、だが彼女はひるまず果敢に包囲網を突破していく。物語は、組織に切り捨てられた女殺し屋が復讐する姿を描く。仕事の手際は鮮やかだが、なぜかとどめを刺す前に殺されなければならばならない理由を訊く。ターゲットは命乞いをしながら必死で言い訳を考える。あの世へ送り出す前に最期の贖いのチャンスを与えているつもりなのだろう、ところが彼女のボスはそれを裏切り行為とみなす。日々のトレーニングで絞り込んだ肉体を駆使し、襲い掛かる男たちをなぎ倒していくヒロインの身体能力は驚異的だ。だが、そのアクションは男性俳優向けのパワー系。もっと合理的テクニックを駆使し、男にはできなないしなやかな身のこなしの殺陣を見せてほしかった。

リヤドでの任務にしくじったエヴァは命からがら脱出、ボスのデュークに真相を質す。デュークは組織の幹部・サイモンとの齟齬に悩んでいた。その後、ボストンでの休暇中エヴァは刺客に襲われる。

ボストンには母と妹、元恋人がいる。元恋人は現在妹と同棲中、母は重病で入院中と、家族との関係は良好とはいえない。特に元恋人はギャンブル依存で多額の借金を抱えている。組織に命を狙われ、家族の前でも気持ちは安らがない。限界にきたエヴァは長年断ってきた酒に手を出してしまう。このあたり、組織に反旗を翻した殺し屋とはいえ、感情を捨てた殺人マシーンではなく苦悩と葛藤を抱えたひとりの女として扱われている。サイモンも家族を大切にしているなど、人殺しは仕事と割り切って生きる人々の人間的な一面が興味深い。彼らは決して “殺人狂” ではないのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もはや逃げ切れないと悟ったエヴァは、サイモンを迎え撃つ。運命であるかのように2人は銃を撃ち合い、殴り合い、投げ合い、関節をきめ合う。己の実力を相手に誇示しながら彼らが格闘する姿は、一流の殺し屋同士がプライドをかけた決闘のようにも見える。圧倒的な体重差はエヴァには不利だと思うが。。。

監督  テイト・テイラー
出演  ジェシカ・チャステイン/ジョン・マルコビッチ/コモン/ジーナ・デイビス/コリン・ファレル/ヨアン・グリフィズ/ジョアン・チェン
ナンバー  71
オススメ度  ★★*


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