こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

約束の宇宙

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8歳の時に見た夢、人生を通じて努力してきた目標がやっとかなう。そのためには幼い娘と離れ離れにならなければならない。物語は、仕事と子育ての板挟みになったシングルマザーの葛藤を描く。何年も待ち続けた、これを逃すとチャンスは二度と来ないかもしれない。だが娘はまだ母親を必要としている年齢。別れた夫に預けても、やっぱり娘に理解を求めるのは酷というもの。本番では失敗が即死亡事故につながるのに、訓練中も心配で仕方がない。娘も母に会えないストレスをため込んでいく。女性の社会進出が進んだ先進国ではありふれた光景だが、これは人類の期待を背負った大プロジェクト、ヒロインは必然的に選択を迫られる。妻に子育てを任せっきりの男性同僚に吐く言葉が、あらゆるワーキングマザーの不満を代弁していた。

宇宙飛行士に選ばれたサラは、フランスに娘のステラを残してロシアの訓練施設に入所する。厳しい肉体的・精神的ストレスがかかるトレーニングに耐えるが、ステラが気になって仕方がない。

娘とは当然フランス語で会話するが、共通語の英語とロシア語も完璧にマスターしている。さらに強重力への耐性や無重力でのバランスなど、知的身体的に抜群のパフォーマンスを残さねばならない。宇宙飛行士になるための資質と努力、それは常人の想像を絶するものなのだ。しかしサラは会議中にステラと交信したり、ステラのために規則を破ったりする。ひとり不適格者が出るとチームごと入れ替えられ他の同僚の夢を壊すことになるのに、ステラへの思いに理性を鈍らせるサラ。優秀な頭脳を持つ彼女ならばこうなることは予想できていたはずなのに、なぜ準備ができていなかったのか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

サラの世話役に “ステラに何かあれば知らせるか?” と問われてうなずくサラ。ロシアにいるうちなら何とか解決策も考えられるが、出発後だったらどうするつもりなのだろう。彼女なら途中で地球に戻ると言いかねない。自身だけでなく他のクルーの命も危険にさらす、そんな不安が脳裏から離れなかった。

監督  アリス・ウィンクール
出演  エバ・グリーン/ゼリー・ブーラン=レメル/マット・ディロン/ラース・アイディンガー/サンドラ・フラー/アレクセイ・ファティー
ナンバー  70
オススメ度  ★★


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