こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち

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手に入れたと思った金メダルが指の間からするりと落ちていった。雪辱を誓って4年、だがチャンスは与えられなかった。物語はスキージャンプ競技で五輪メンバーに選出されなかった男の葛藤を描く。金メダルのためだけに長く苦しいトレーニングに耐えてきた。若手の台頭に焦りもした。それでも順調に実績を重ね、五輪出場は確実と思っていた。そんな時に彼を襲ったけが。家族に支えられて懸命にリハビリに励むがやっぱり願いは届かない。かなわなかった夢。砕け散った希望。勝者になれるのはほんの一握りの、才能と運に恵まれた者だけだ。残り大多数の敗者は、いかにしてその後の人生を、誇りを失わずに生きるか。どん底から立ち直る主人公の姿は、与えられた仕事を精一杯やり遂げようとする美しさに満ちていた。

前回五輪銀メダリストの西方は長野五輪メンバーから落選。コーチからテストジャンパーになれと打診され引き受ける。ジャンパーの合宿所に入るが、原田の動向が気になって仕方がない。

原田のせいで負けたと思っている西方は、原田が長野でも飛ぶことに腹立たしさすら覚えている。すれ違っても無視し、声をかけられても視線を合わせない。嫉妬するのはカッコ悪いとわかっているが、素直に原田を応援できない自分を認めてしまっている。きれいごとではない、代表メンバーの活躍を喜べない西方の複雑な感情は、あと一歩届かなかった敗者が味わってきた屈辱。当然、いつも笑っているような顔の原田が受けているプレッシャーなど思いやる余裕はない。人生のほとんどの時間を競技に費やしてきたのに報われなかった者だけが知る挫折感がリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

オリンピック本番の日、天候が急変し、テストジャンパーが全員ジャンプを成功させなければ日本の逆転はない。全員が一丸となってチームのために尽くす。そして選ばれた者たちは彼らに感謝を忘れない。その熱い思いが、いかにも感動秘話的に語られるのには少し引いた。言葉ではない、さりげない仕草で表現してほしかった。

監督  飯塚健
出演  田中圭/土屋太鳳/山田裕貴/眞栄田郷敦/小坂菜緒/落合モトキ/濱津隆之/古田新太
ナンバー  113
オススメ度  ★★*


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