こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イン・ザ・ハイツ

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一旗揚げるためにこの街にやってきた。なのに一向に芽が出ない。ならば故郷に帰って父の思いを継ごう。もう若くない男は自らの将来になかなか期待を持てない。物語は、マンハッタン北部にあるカリブ海諸島出身者が暮らす一角を舞台に、さまざまな人々の日常をスケッチする。誰もがここから羽ばたいていきたいと願っている。一方で、一度外に出たのに戻ってきた者もいる。この街を故郷と決め懸命に働く者もいる。家賃高騰で引っ越さなければならない者もいる。みなそれぞれの胸に希望や挫折、苦悩や葛藤を抱えている。それでも前向きに、その日一日を大切にして生きていることは変わらない。元気な時も元気がない時も歌って踊ればたいていのことは好転するとこの作品は教えてくれる。市民プールのシーンで肩関節を外す男のダンスをもっと見たかった。

小さな雑貨店を営むウスナビはデザイナーを目指すバネッサに思いを寄せているが、ドミニカで父の店を再建させる計画も進めている。ふたりは急接近するがなかなか恋人になれない。

この街では誰もが認める優等生だったニーナが突然戻ってくる。西海岸の名門大学で差別を受け中退を考えているのだ。白人中心の私立大学では、どれだけ頑張っても平凡な移民の子はスクールカーストの上位には立てない。また、マンハッタン中心部に部屋を借りようとするバネッサも不動産屋から露骨な対応を受ける。小さな町の中では自由に生きられても白人中心社会に出るとマイノリティの悲哀を味わう。それは信用できないという偏見。暴力やドラッグには無縁で真面目に働く人々ばかりなのに、一部の犯罪者がイメージを悪くしているのだと彼女たちの悲劇は訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ウスナビは年端もいかない子供たちに小さな夢を持つ大切さを語る。事業を始めて成功する、政治家になって社会を変える。そういう大きな夢も、目の前の目標を一つずつクリアすることの積み重ね。逆境は人を強くする。努力を続けていれば失敗しても次につながる糧が得られるとウスナビの背中は語っていた。

監督  ジョン・M・チュウ
出演  アンソニー・ラモス/コーリー・ホーキンズ/レスリー・グレイス/メリッサ・バレラ/オルガ・メレディス
ナンバー  137
オススメ度  ★★★


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