こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダ・ヴィンチは誰に微笑む

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巨匠の手による真作か、それとも彼の工房で弟子が描いたのか。期待は憶測を呼び、売値を釣り上げていく。カメラは、レオナルド・ダ・ヴィンチ作とされる肖像画をめぐるマネーゲームを追う。米国の田舎町で見つかった絵は、最初廉価で落札される。だが自らの直感を信じた美術商は、手間暇かけて修復する。それがレオナルドの作品と確信した彼は、研究者や有名美術館の学芸員などに鑑定してもらう。そこで得たお墨付きは、絵の運命だけでなくかかわった人々の人生にまで影響する。来歴はわからない。鑑定書もない。権威あるプロが出した答えだけが独り歩きしていく。今や投資対象と化したアート、買い手はババをつかまされたのか? そしてそれを誰かに押し付けたのか? 虚々実々の駆け引きは今にも血が流れそうなほどスリリングだった。

2017年、オークションで4億5千万ドルの値が付いたレオナルドの “救世主”。存在自体が幻だったその絵は、“真作” として、ロンドンのナショナル・ギャラリーに展示される。

鑑定した専門家たちが疑念を完全に払拭していないにもかかわらずナショナル・ギャラリーがレオナルド作と認めたため、“救世主” は世界の注目を浴びる。まあこのあたりまではアート界隈のよくある話。ところが値上がりを期待したロシアの富豪が触手を伸ばしてきたことから一転きな臭くなってくる。仲介したフランス人はいかにも忠実な執事という雰囲気を醸し出しながら、ロシア人を手玉に取り莫大な手数料を懐に入れる。保管場所も「テネット」に出てきた非課税の空港倉庫。富豪に群がって暗躍する男たちの姿は強欲と呼ぶにふさわしい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ルーブル美術館が懐疑的な鑑定結果を出した一方で、今度はアラブの王子が関心を示す。資金力に物を言わせて “真作” の太鼓判を欲するが、ルーブルの態度は変わらない。このあたり、そもそも極秘に進められていたプロジェクト現場の撮影許可をどうやって取ったのか? ぜひともそこが知りたい。高い買い物だったことを認めない王子の複雑な表情が印象的だった。

監督     アントワーヌ・ビトキーヌ
出演     
ナンバー     219
オススメ度     ★★★*


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