こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミラベルと魔法だらけの家

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家族みんなが授かっているのに、なぜか自分だけは与えられなかった。明るく振舞ってはいるけれど、やっぱり寂しかった。物語は、代々魔法を受け継ぐ家系に生まれたのにひとりだけ能力が発現しなかった少女の繊細な気持ちを描く。母も叔母も姉たちもいとこたちも、魔法を使って村人の生活を守っている。なのに、どれだけ頑張っても役に立つどころか足を引っ張るばかり。家長である祖母には怒られてばかりでいつの間にか距離ができてしまった。考えすぎないように気を付けているけれどやっぱり劣等感にさいなまれてしまう。そんなヒロインの屈折した思いが、表情と動作がデフォルメされたアニメで再現されていた。家一軒を持ち上げるほどの怪力を持つ姉が、人々の期待にこたえ続けなければならないプレッシャーを歌うシーンは、魔法など呪いでしかないと訴える。

おばあちゃんと一族が守ってきた家にひびが入り始める。消息を絶った叔父・ブルーノが解決のヒントを握っていると知ったミラベルは、彼が隠れ住む秘密の部屋で未来を見てもらう。

予知能力を持ち予言がすべて現実になってしまうが故、ブルーノは忌み嫌われ人前から姿を消した過去を持つ。ブルーノの予言でも家を壊すのはミラベル。でも運命はきっと変えられると信じたい彼女は、なんとか方策を探る。その過程で、魔法を使えるようになった姉たちも、実はその魔法を使えることで自由が制約され、人々が期待するような行動をとらなければならない苦悩を告白する。結婚してNYに渡った元プリンセスなら彼らの気持ちをリアルに理解できるだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

予言が現実になり始めるが、もはや止められない。だが、予言の先にある未来までは誰も知らない。ミラベルの絶望、おばあちゃんの失望、ブルーノの奮起。目まぐるしい展開は非常に情報量が多い画で再現され、そのスピードには視覚がついていけない場面もあった。後半以降はミラベルやブルーノ、おばあちゃんの行為や心情の変化を考える間もなく、その力技に押さえ込まれた。

監督     バイロン・ハワード/ジャレッド・ブッシュ
出演     
ナンバー     218
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://www.disney.co.jp/movie/mirabel.html