こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

嘘八百 なにわ夢の陣

真作贋作入り乱れ、本当の値打ちなど誰にもわからない。そこに価値を見出す人が多ければ取引価格は上がり専門家が箔つけに太鼓判を押すが、魅力がなければ見向きもされない。そこで重要視されるのがストーリー。物語は、太閤の逸品とされる器を巡る騒動を描く。記録にはあるが存在は確認されていない。断片らしきものは発掘されるが真贋は定かではない。ならば偽物と承知の上ででっちあげればいい。詐欺師まがいの骨董屋と才能はあるのにくすぶっている陶芸家のコンビは、ビッグイベントの裏をかいて大掛かりな仕掛けを講じる。器だけでは相手にされない、古文書や木箱を偽造してそれらしさを演出する用意周到さがコンゲームの楽しさを加速させる。古美術商の仕事は買い手のロマンを形にすること。まさに、“夢のまた夢” の実現なのだ。

大阪秀吉博のプロデューサー・則夫は秀吉の器・鳳凰探しに奔走する。一方、別の秀吉博を企画する波動アーティスト・TAIKOHはマネージャーを通して佐輔に鳳凰の贋作製作を依頼する。

同時期に同工異曲イベントに参加することになった2人。利権に群がる男たちが蠢く東京五輪型と高額グッズを信者に売りつける統一教会型、主催団体はタイプこそ違うが胡散臭さは同様に強烈だ。彼らに利用されるだけでは終わらず、則夫と佐輔はその野心や欲望を逆手にとって一泡吹かせようとする。その過程で見せる、器の原料となる土とガラス集めから鳳凰にふさわしい調合にして焼き上げるなど徹底的に “らしさ” にこだわった仕事ぶりは、2つの秀吉博の主催団体の詰めの甘さと比べると、ディテールに神は宿るのは真作だけではなく贋作にも当てはまると訴えていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

TAIKOHは自身の波動が詰まった最高傑作・鳳凰の絵を完成させる。彼の新作は、信じるものにとってはいくらカネを積んでも手に入れたい一品。現代アートもまた、作品そのものの魅力よりもその付加価値に値段が付くという皮肉が凝縮された展開は、投資目的に美術品を買いあさる収集家の心理を嘲笑しているようだった。

監督     武正晴
出演     中井貴一/佐々木蔵之介/安田章大/中村ゆり/友近/森川葵/前野朋哉/宇野祥平/塚地武雅/吹越満/松尾諭/笹野高史
ナンバー     225
オススメ度     ★★★*


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