こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

大怪獣のあとしまつ

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体内で腐敗が進みガスが発生、風船状に隆起した表面は今にも破裂しそう。強烈な腐臭は立ち入り禁止区域の外側まで漏れ、住民の反発を招く。物語は、都市を破壊した大怪獣の死体処理をめぐる政府機関の攻防を描く。首相のもとに集合した閣僚たちは、最初は事態に戸惑い厄介ごとを押し付けられまいと逃げ腰になる。だが、危険がほとんどないとわかると手柄を上げるチャンスとばかりに積極的になる。怪獣を倒すまでは一致団結していたのに、それぞれの省庁が我田引水に走り出すのだ。一方、現場を仕切る官僚や特務隊員たちもまた指揮権をめぐって混乱する。「シン・ゴジラ」の登場人物とは裏返しのような保身と出世しか考えない政府関係者の姿は、コミカルかつシニカルで、かえって人間らしい感情に満ち溢れていた。

死体処理の現場責任者に任命された特務隊員のアラタは、元恋人で環境大臣秘書官・ユキノと対策を練る。ユキノの夫で総理秘書官の雨音は、別のプランで臭気問題の解決を図る。

謎の光エネルギーで生命活動を終えた怪獣の死体は簡単には解体できない。凍らせてもすぐに内部放熱で溶ける。そして水流で海洋投棄する案が採用され実行に移される。その間、怪獣の死体をめぐって外国政府が様々な声明を出す。日本政府の対応のまずさを批判していたくせに死体が観光資源になりうるとわかったとたんに引き渡しを要求する女報道官は、朝鮮語と中国を混ぜたような言語を話すが、理不尽な発言内容はいかにもなリアリティに満ちていた。他にも下ネタ多めの小ネタの数々は、未曽有の危機を克服した後の復興時では損得勘定に頭をフル回転させる政治家たちを強烈に皮肉っていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

上流のダムを決壊させる計画が実行されるが、想定通りには事は運ばない。さらに怪獣の体液に触れた者の体に異変が生じ始める。現代のテクノロジーでは追いつかない難題、もはや人知を超えたパワーに頼るしかない。それぞれに事情を抱えた脇キャラは、この誰も思いつかなかった設定に奥行きを与えていた。

監督     三木聡
出演     山田涼介/土屋太鳳/濱田岳/眞島秀和/ふせえり/六角精児/矢柴俊博/岩松了五/田中要次/嶋田久作/笹野高史/菊地凛子/二階堂ふみ/染谷将太/松重豊/オダギリジョー/西田敏行
ナンバー     25
オススメ度     ★★★


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