こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

再会の奈良

f:id:otello:20220210130349j:plain

わが子同様に育てた娘はどうしているだろう。元気でいると思ってはいるが、きちんと会って確かめたい。物語は、音信不通になった養女を探しに中国からやってきた老婆が、通訳の娘と警察OBの男とともに消息を訪ねまわる過程を描く。中国残留日本人孤児だった養女は10年以上前に日本に帰った。突然手紙のやり取りが止まってしまった。もしやという不安を抱えながらも態度には出さないようにしている。娘の通訳は少し不自然だが、日本人の男は親切そう。わずかな手掛かりを頼りにかかわった人たちの記憶を手繰り寄せ養女を探す3人の姿は、ミステリーでもありロードムービーでもある。小さな町を出て緑深い山を縫うように曲がりくねった道路をクルマが走るシーンは、未知の世界への旅にいざなわれているようだった。

奈良で働く初美を頼りに来日した彗明。どうすれば養女が見つかるか相談していると、吉沢と名乗る老人に声を掛けられる。吉沢は養女を知っているかもしれないと言い、警察の先輩に連絡を取る。

奈良県内に住んでいる残留孤児たちをあたって写真と手紙を見せて回るが、養女の日本名が分からないために調査は難航する。それでも、養女を知っているアパートの大家や寺の管理人などを見つけて、彼女の情報を集めていく。そこで明らかになっていくのは、残留孤児たちが日本人親と感動の再会を果たし来日した後の残酷な現実。言葉もわからず習慣も違う。親族から邪魔者扱いされる。財産目当てで来日したといわれた人もいる。いくら血がつながっていても埋めがたい溝。山奥の一軒家に住む夫婦が中国共産党をたたえる歌を披露するシーンが、相互理解など理想に過ぎないことを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

きっと彗明は、手紙が途絶えた段階で結果をある程度は予想していたのだろう。それでも養女がどんな人生をたどったのかを知りたい。神社に迷い込んだ3人は、激しい太鼓と笛の音に合わせて竿燈を乱舞させる祭りに見とれる。それは戦争に翻弄され波瀾の人生を送った養女に対する供養にも見えた。

監督     ポンフェイ
出演     國村隼/ウー・イェンシュー/イン・ズー/秋山真太郎/永瀬正敏
ナンバー     26
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://saikainonara.com/