こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

大河への道

偉業を成し遂げたと信じていた歴史上の人物は、実は完遂前に死んでいた。だがその大願は弟子たちに受け継がれ、死を秘したまま成就する。物語は、江戸時代に初めて日本地図を作った男をドラマ化しようとする男たちと、“作者” の死後に地図を完成させた人々の奮闘を追う。なるべく正確な地形を再現するために数十歩歩いては距離を測り記録していく。レンズなどなくすべては目視、ある時は砂浜ある時は崖と道なき道を測量しながらあらゆる海岸線を徒歩で進む姿は、この事業を成功させようとする途方もない熱量を感じさせる。一方、真実を知った現代の公務員たちは彼らの努力に思いをはせつつ自分たちの仕事のエネルギーへと昇華していく。大事をなすには嘘も許される。大切なのは最後までやり通す意思だとこの作品は訴える。

市役所職員・池本は地域振興策として地元出身の英雄・伊能忠敬大河ドラマ化する企画を立てる。脚本を依頼された加藤は「伊能は日本地図を作っていない」と断言、計画は頓挫する。

加藤はその理由を池本たちに語るのだが、まず伊能は日本地図完成の3年前に死んでいると指摘する。伊能の弟子たちが幕府からの資金援助がなくなるのを危惧し、伊能の死を隠して測量と製図を続けたというのだ。幕府との中継役・高橋という侍も謀に参加、むしろ一番弟子の綿貫とともに積極的に偽装工作に手を染める。現代の池本と江戸時代の高橋、優柔不断で上役にはペコペコ、部下にも気を使いすぎるけれど、一度決めたことはやり通す意志の強さも持つ役人を、中井貴一が器用に演じていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

細い絵筆や製図道具などで数センチずつ海岸線を和紙に描きこんでいくのは気の遠くなるような作業。職人たちの熱意と根気は、小さなことの積み重ねこそが大きな結果につながると教えてくれる。ただ、随所にコミカルな要素を挟んで笑いを取ろうとしているのだが、非常にセンスが古い。密偵の神田が何度もぎっくり腰になるがそのたびに「ゴキッ」と効果音が入るのにはうんざりした。

監督     中西健二
出演     中井貴一/松山ケンイチ/北川景子/岸井ゆきの/和田正人/立川志の輔/西村まさ彦/平田満/草刈正雄/橋爪功
ナンバー     93
オススメ度     ★★*


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