姉は小さな花屋を営んでいるが、母娘関係はうまくいっていない。妹は劇作家を気取っているが、執筆より飲んでくれてばかり。物語は、高級マンションに暮らす主婦が、姉妹の絆に翻弄されながらも、自分の人生と家族との関係を見直していく過程を描く。商売が繁盛しているとは言えない姉はがんを患っている上、娘はパンクにはまって反抗期真っ盛り。酒を飲んでは周囲に迷惑と不機嫌をまき散らす妹は、今日も誰かに絡んでいる。そんな中、ひとり成功した女を演じ続けている次女は、幼い娘をしつけられない上に夫の浮気現場を目撃してしまう。思い通りにならず、不愉快ことばかり起きる日々。それでも、大ごとにならないように必死で取り繕っている彼女たちのやせ我慢が、時に切なく、時にいとおしく、時に滑稽だった。
高級マンションに引っ越したミヨンはコーラス隊の若い女と夫の関係に気づく。筆が進まないミオクは誰彼となく電話しては当たり散らしている。ヒスクはひとり娘との間に会話すらない。
ほとんどプータローのような暮らしを続けるミオクはぐうたらと昼頃まで寝て、スナック菓子と酒を手放さない。家事は一切しない上、夫の心配などお構いなしで勉強中の継子の邪魔をしたりする。見かねたミヨンが食事に誘うと、椅子に立膝で座り非常に行儀の悪い食べ方をする。当然肌は荒れ体の線は崩れている。夢破れたのに気づきながらも頭の切り替えができないまま中年になってしまった女の甘ったれた姿は、過酷な競争社会と喧伝された韓国も意外と緩いことを教えてくれる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
継子の進学の一件で母性に目覚めたミオクが急に食事の用意をして夫と継子に食べさせるが、彼女がテーブルを離れたすきに彼らはキムチで味を変える。また、ミヨンのクルマに同乗したヒスクの娘が、己の体型を棚に上げミヨンの息子をデブとけなす。このあたり、明らかに家族や子育てに失敗した三姉妹の日常に潜むほのかな笑いが丁寧に掬い取られていて、うんざりするほど低調な映像に絶妙の光明をもたらしていた。
監督 イ・スンウォン
出演 ムン・ソリ/キム・ソニョン/チャン・ユンジュ/チョン・ハンチョル/ヒョン・ボンシク
ナンバー 114
オススメ度 ★★★*