こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サバカン SABAKAN

急な坂道を登り切った見晴らし台から見た町は、ちっぽけに見えた。自分たちの力で島まで泳ぎ切った。一度しかない濃密な時間、2人の少年はお互いが友達だと信じた。物語は、小学5年の夏休みを共に過ごしたクラスメイトとの思い出を描く。クラスでは孤高を保っていた彼は、海棲生物の絵がうまかった。貧しかったが、家族で助け合っていた。そんな彼になぜか選ばれた。口数は少ない。どんどん先に行ってしまう。だが、ヤンキーに絡まれても決して逃げも媚びもせず反撃するなど、根性は座っている。彼と遊ぶことに夢中になった主人公は、かけがえのない信頼関係を結んでいく。にぎやかな両親と兄弟の4人家族と、5人きょうだいの母子家庭という環境の対比が、格差を越えた友情を結べるのは子供のうちだけであると訴える。

貧乏人と馬鹿にされている竹本からイルカを見に行こうと誘われた孝明。翌朝早く2人は出発し、大きな岩の向こうにある入り江に到着、その沖の小さな島を目指して泳ぎ始める。

集落と学校と家以外の世界を知らなかった孝明は、毎日のように竹本とつるみ、山野を駆け巡る。遊んでいるときは無邪気な表情の竹本だが、家族の話になると一瞬顔を曇らせる。孝明もその理由が、ぼろい家に住んでいることだとわかっている。だからこそ、外で遊びお互いの家を行き来しない。そんな竹本が一度だけ孝明を自宅に呼び、“サバカン寿司” を振る舞う。弟妹たちの面倒を見なければいけない竹本の重荷を少しだけ孝明が背負う、その距離感が心地よかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

年上の不良の噂話を小耳にはさんだ小学生が友人同士で冒険の旅に出るなどという剽窃に鼻白んだが、まあこんな話は世界中どこにでもあるのだろう。それでも、小島までの旅は凡庸で、ミカン泥棒の話も通俗的。駅での別れと再会も既視感あふれるパターンだ。なにかひとつでいい、この作品を際立たせる要素や視点、斬新な描写が欲しかった。これが作家となった孝明が上梓した文学作品ならば、編集者の言うように売れないのは納得だ。

監督     金沢知樹
出演     番家一路/原田琥之佑/尾野真千子/竹原ピストル/ 貫地谷しほり/草なぎ剛/岩松了/村川絵梨/福地桃子/茅島みずき
ナンバー     155
オススメ度     ★★


↓公式サイト↓
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