こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グランド・ジャーニー

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鳥になる。それは孵化を見守って “親” と認識されることから始まって、餌を与え、連れまわして歩いて危険なものを認識させ、水に導いて泳ぎ、一緒に空を飛んで進むべき方向を覚えさせるまで鳥と共に生活して、初めて成し遂げられる。物語は、渡り鳥の保護活動をする鳥類研究家と彼の息子の壮大な挑戦を追う。避寒地の南仏で生まれたひなたちが飛べるまで見守り、北極圏の営巣地に運搬車で運ぶ。そこから渡りのルートを学ばせるために、小型機で先導する。しかし、誰の許可も取っていない研究者たちは思わぬところで足止めを食う。地を這うようなアングルと上空からの視点、さらに雨雲の上から見た絶景。それら、鳥たちと同じ視線で主人公が見た光景を再現した映像は、自由という翼を得ようとする人間の願望を象徴していた。

ガンの渡り地を開発から守ろうとするクリスチャンは、息子のトマと共に卵からかえったばかりの雛を育て始める。雛は最初に見たトマが親だと刷り込まれ、彼の後をついて回るようになる。

ゲーム機ばかりいじっていたトマも、雛たちに羽が生え飛べるようになるころにはすっかりガンの親代わり。小型機の操縦を教えられると、解放感に浸り鳥と空に夢中になっている。やがて、クリスチャンとトマは、もう渡りに耐えられる大きさになったガンたちとノルウェイ北部の営巣地に赴くが、フランス当局の許可を得ていないのがノルウェイの監察官にばれ、計画を止められる。だが、トマをだれも止められない。大人たちの制止を振り切って大空に飛び立つトマの姿は、独り立ちから冒険が始まると訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

スマホの電源を切ったトマは追跡を振り切り、フィヨルド沿いに南下する。心配する両親、ところが、母は半狂乱になってトマを探していたのに、少しずつ事情が理解できるようになるとトマを熱烈に応援する。トマの成長に応じて両親もまた成長する。そんな家族の愛がまぶしかった。自分を変える、そして世界を変えるには時にさび付いたルールを破る必要があるとこの作品は教えてくれる。

監督  ニコラ・バニエ
出演  ジャン=ポール・ルーブ/メラニー・ドゥーテ/ルイ・バスケス
ナンバー  51
オススメ度  ★★★★


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