こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

メイクアップ・アーティスト ケヴィン・オークイン・ストーリー

男の子らしい遊びや野球には興味がなかった。そのかわり、絵を描くのが好きだった。やがて女の子をキレイにすることに喜びを覚えるようになった。映画は、1980~21世紀初頭にメイクアップアーティストとして活躍した男の人生をたどる。保守的な田舎町では生きづらく、大都会に飛び出した。従来の塗り重ねるような手法ではなく、顔そのものが持つ美しさを引き出すようにした。やがてスターから指名されるようになり、ファッション誌の表紙モデルを担当するようになった。だが、忙しくなり稼げるようになり有名になるにつれて大きくなる、古くから付き合いのあるマネージャーとの軋轢。そこを乗り越えてファッション&ショービズ業界の神話になった彼の生き方は、斬新かつ刺激的だった。

足し算のメイクからナチュラルなメイクへの変革を成し遂げたケヴィン・オークイン。ホイットニー・ヒューストンライザ・ミネリのメイクを担当し、ブルック・シールズを男装させ世間を驚かせる。

シャドウに微妙な濃淡をつけることで顔が立体的に見える。ケイト・モスナオミ・キャンベルら彫の深くない顔のモデルたちは、特に彼のメイクが引き立つ。その後も、眉毛をすべて抜いてから細眉を引く革新的な眉メイクを創造する。そして、ケヴィンが資生堂とライセンス契約すると、平板な顔の日本人がこぞって立体メイクを施すようになる。コスメ&メイク専門誌がファッション誌から派生して次々と創刊されたのもケヴィンの影響だろう。一方で、LGBTの権利拡大に寄与しクリントン大統領とも交流するなど、彼の活躍は枚挙にいとまがない。そんな彼の「生き急ぎ」感が半端ではなかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

成長ホルモン異常から末端肥大症になったケヴィン。20代のころは180センチほどだった身長が205センチにまで伸び続けたという。鎮痛剤の飲みすぎで意識を失うこともあり、40歳で早世する。常に常識を覆すようなアイデアを求められるプレッシャーと闘い続けたケヴィンの、時代を先取りするセンスはいまだに色あせていない。

監督     ティファニーバルトーク
出演     ケイト・モス/リンダ・エバンジェリスタ/ナオミ・キャンベル/シェール/イザベラ・ロッセリーニ/ブルック・シールズ/ポーリーナ・ポリスコワ
ナンバー     161
オススメ度     ★★*


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