こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チケット・トゥ・パラダイス

愛しい一人娘の暴走を止めなければならない! 離婚し、その後もいがみ合っていた熟年男女は、一世一代の危機とばかりに休戦協定を結び共同戦線を張る。物語は、卒業旅行先の南国の島で現地の若者と恋に落ち結婚すると言い出した娘を翻意させるために策をめぐらせる元夫婦の奮闘を追う。若気の至りで将来を決めても後悔するだけ。自分たちと同じ轍を踏んでほしくない。そんな思いばかりが先走り、娘の気持ちを考えず婚約者の人柄も見ようとしないふたりは、“成功した米国白人” の傲慢さが漂う。一方で、島で慎ましく生きる人々は穏やかな人間関係に恵まれ、物質的に豊かではなくても幸せそう。競争とそれが勝者にもたらす富よりも、平凡だが満ち足りた暮らし。人生に必要なのはどちらなのかこの作品は教えてくれる。

リリーの結婚式に招待されたデヴィッドとジョージアは機内で鉢合わせするが、結婚反対の意見は一致。とりあえず様子を見て、臨機応変に式を中止にする作戦を立てようと合意する。

ジョージアは、“女もキャリアを積んで成功を目指せ” と教育を受けた世代。デヴィッドと離婚後も画廊経営者として活躍している。彼女に育てられたリリーも当然キャリア志向で、ロースクールでは総代を務めるほどの成績を残している。だが、海で助けてくれたグデの透明な瞳に一目ぼれする。弁護士としての未来をあっさり捨て、言葉も文化・宗教も違う世界で愛する人との生活を選ぶのだ。常に上昇志向を持ち続けなければ生き残れない社会に息苦しさを覚えていたのだろう、「嫁に行くのが女の幸せ」という古い価値観を選択する姿がかえって新鮮だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが、デヴィッドとジョージアも島の美しさに少しずつ魅了されてくる。もう若くないけれど引退するほど老いてはいない。あくせく働かなくてはならないほどカネに困っていない。人生をやり直す最後のチャンスかもしれないという考えが頭をよぎり始める。ナイトクラブで披露した20世紀風のダンスが、彼らの青春もまだ終わっていないと訴えていた。

監督     オル・パーカー
出演     ジュリア・ロバーツ/ジョージ・クルーニー/ケイトリン・デバー/マキシム・ブティエ/ビリー・ロード/リュカ・ブラボー
ナンバー     207
オススメ度     ★★★


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