親しい友人知人と過ごすクリスマス、楽しい夜になるはずだった。いや、楽しい夜にしなければならないはずだった。物語は、郊外に住む家族の元に集まった計12人の男女子供たちが織りなす人間模様を描く。みな再会を喜んでいる。近況を報告し合い、思い出話に花が咲く。だが、若いころに戻ったかのように無邪気に語り合っているのに、ある話題を避けている。なるべく自分からは口にしないように大人たちは配慮しているのに、子供たちはお構いなしに大人の偽善を見抜いていく。残された時間はあとわずかという状況で人は何をすべきか。緊張とあきらめと恐怖と思いやりの末に、やっぱり悪あがきする。そんな人間のエゴがむき出しにされていく過程はスリリング、彼らが抱える感情がリアルに再現されていた。
ネル一家が暮らす郊外の一軒家に、サンドラの夫と娘、ベラとジェームズがそれぞれパートナー同伴で訪れる。戸外では全生物を破滅させる猛毒雲が彼らの元に迫っていた。
終末から逃れられないのはわかっている。今さら誰かを非難しても何も変わらない。だからこそ最期に気の置けない仲間で集まったというのに、どこかぎこちない人間関係。苦しまずに済むピルを与えられた自分たちを幸運だと無理に思い込む一方で、やはりと政治と国際社会の不手際のとばっちりを受けたと納得いかない。何度も話し合って何得したのに、いざその時が迫ると不満や愚痴を言いたくなる。ネルの長男・アートは彼らの本音を代弁するかのように自分勝手な言動に走る。死は今夜確実にやってくる、それでもその運命に少しでも抗って生き残ろうとするアートの姿は、わがままというよりむしろ好感が持てた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ジェームズの妻・ソフィが妊娠を理由にピルを飲まないと言い出しアートも同調、結んでいた協定を破り屋敷から抜け出す。そして森の中で見た血塗れの死体。理性では納得していても心は拒絶する。自分の意志で命を絶つのは嫌。最後まで生存の可能性を模索した者だけが新しい時代を作るとラストシーンは訴えていた。
監督 カミラ・グリフィン
出演 キーラ・ナイトレイ/マシュー・グード/ローマン・グリフィン・デイビス/アナベル・ウォーリス/リリー=ローズ・デップ/ショペ・ディリス/カービー・ハウエル=バプティスト/ルーシー・パンチ/ルーファス・ジョーンズ
ナンバー 215
オススメ度 ★★*
↓公式サイト↓
http://silent-night.jp/