こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

母性

彼女が最も愛したのは、腹を痛めて産んだわが子ではなく優しく育ててくれた自分の母。彼女の娘は、そんな母親に戸惑いながらも、なんとか彼女に認められようと努力する。物語は、少し “普通” とは違った感覚を持つ母娘がお互いに違和感を抱きながらも家族を続けるうちに起きた悲劇を描く。己を罰するかのように過酷な境遇に耐える母。姑は彼女につらく当たり奴隷のようにこき使う。父は我知らずの態度を取り続けるだけで家庭内の軋轢には口を挟まない。まだまだ女性の社会進出が進んでいなかった時代、女は人生のステージによって「娘」「妻」「嫁」「母」と役割が変わる。それを運命と受け止めるヒロインの硬直した思考が哀しい。一方で、学生運動から労働者階級になった父が愛人と密会を楽しむ姿は、21世紀における男女の自由恋愛の退潮を強く訴える。

絵画教室で田所と知り合ったルミ子は母の後押しもあって結婚、清佳という娘ができる。清佳が幼稚園児の時ルミ子の母が焼死、ルミ子の心に清佳に対するわずかな敵意が生まれる。

一家は田所の実家で暮らし始めるが、ルミ子が気に入らない義母はことあるごとにルミ子を責める。実母を見捨てた呵責に苛まれていたルミ子は義母の言いなりになることで罪が清められると信じている。まじめで正義感の強い高校生になった清佳がごく常識的な判断からルミ子への義母の仕打ちに異議を唱えるが、ルミ子はそれすら気に食わない。愛しているのにルミ子への思いは拒まれる、そんな清佳の残念な気持ちがリアルに再現されていた。高畑淳子の鬼姑ぶりが昭和のドラマを見ているようで懐かしい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、そもそも導入部の女子高生自殺事件とルミ子清佳母子の事情は、状況が偶然酷似していただけで関連はないはず。それを無理矢理ミステリー仕立てにする構成には疑問が残る。また、全体的に暗く彩度の低い映像はひたすら陰鬱な気分にさせる。まさしく “イヤミス” の真骨頂ではあるが、たいしたどんでん返しもなかったのでカタルシスは得られなかった。

監督     廣木隆一
出演     戸田恵梨香/永野芽郁/三浦誠己/中村ゆり/山下リオ/高畑淳子/大地真央/落井実結子
ナンバー     220
オススメ度     ★★


↓公式サイト↓
https://wwws.warnerbros.co.jp/bosei/