封印されたはずのリレー小説で、登場人物のモデルとなった人々が次々と惨殺される。カギになるのは顔の見えない男と髪の長い女。物語は、ウェブ小説の著者たちが、何者かが勝手に創作した追加章を読むうちに、その小説世界に引き込まれていく過程を描く。悪夢に誘い込むようなメロディが思考を乱す。モニターに映し出された文字が踊り出す。聴覚と視覚をコントロールされた脳はいつしか幻覚を見るようになる。人間の怨念の象徴をあえて長髪白衣の貞子風にした割り切りが、設定のわかりづらさを緩和していた。無限に拡散させるのも可能なネット空間を利用しながらも、狙った相手しか殺さない。その逆転の発想がユニークだった。幽霊が現実世界に存在してはいけないという制約は、いかにも現代の中国的発想だ。
「残星楼」更新の知らせを受けた書き手のタン・ジンは入力した覚えのない最終章を読み始める。小説の中でヒロインが惨殺されると、タン・ジンも同じような傷を負った死体になって発見される。
タン・ジンの従妹・シャオノアは学生記者のマー・ミンの助けを借りて事件の真相を追う。さらに「残星楼」の執筆者の男女3人が変死、加筆された最終章のプログラムに何らかの仕掛けがあると当たりをつける。このあたり、背筋に感じる視線や耳元でささやかれる名前など、Jホラーが得意とする描写がちりばめられ、思わず身震いさせてくれる。肉体を物理的に攻撃してくるのではなく、心の奥に潜む恐怖を直接わしづかみにされるような感覚に息苦しくなった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
4人を自殺と決めつけていた刑事もマー・ミンの仮説を受け入れ、車いすの天才プログラマーを捜査対象にする。そこで明らかにされる衝撃の真実。決してウイルスなどではなく、特定の条件に当てはまる人にだけ効力を発揮する特殊なコードを埋め込んだウェブサイトで当該者の脳を遠隔操作する。個人的な恨みを晴らすために使う分にはホラーの題材になるが、本当に有効性があるのなら、中国政府が率先して自国民の統治に悪用しそうで怖かった。
監督 鶴田法男
出演 フー・モンポー/スン・イハン/シャオ・ハン/チャン・ユンイン/ワン・マンディ/ハン・チウチ/チョウ・ハオドン
ナンバー 188
オススメ度 ★★★