人生で一番きらめいていた3年間が、校舎と共に思い出になっていく。友達と騒いだ時間、恋人と語り合った時間、ひとりで過ごした時間。生徒たちはそれぞれの記憶を反芻し、懐かしさと切なさに浸っている。ずっとこのままでいたい。でも旅立たなければならない。そして彼女たちは大人になっていく。物語は、卒業式を控えた女子高生たちの2日間を追う。ボーイフレンドのために弁当を作るのが日課だった女子は幸せだった昼休みが忘れられない。ぎくしゃくした関係を修復しようとする女子は思い切って電話をかける。積極的な女子はシャイな男子の長所を引き出そうとする。恋や友情、部活や勉強といった青春の熱量は低めだが、未来への期待と不安が入り混じった繊細な感情が共感たっぷりに再現されていた。
答辞を読むまなみは駿への思いを引きずっている。バスケ部の由貴は東京の大学に進学、地元に残る寺田と気まずい状態が続いている。軽音部の杏子は森崎の扱いに頭を悩ましている。
晴れの日の大役を仰せつかったのにまなみの表情はさえず、時折遠い目で物思いにふけっている。幻覚なのか現実なのか、まだ過去にとらわれている。寺田との別れ話をきちんとしたい由貴はいろいろ手を回すが、寺田の不機嫌さは直らない。杏子は異端視されている森崎への誤解をなんとか解こうと画策する。あと1日しかない、わだかまりを残さず笑顔で巣立ちたい、そう願う女子高生たちが胸に秘めてきたピュアな気持ちを行動に移していく過程は、そっと背中を押してあげたくなった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
クラスになじめず図書室が居場所だった詩織は、司書の男にだけは心を開いている。最後くらいとクラスメートに話しかけ司書のアドバイスに従うがまったく裏目に出る。だが彼の読みが昇華されるシーンは、高校3年生ならもう自分と違う価値観を持った人間にも興味を持つ程度には成熟していることを教えてくれる。彼女たちが見た「キャリー」はリメイク版だろうか。デ・パルマ版のラストシーンに息が詰まったのを思い出した。
監督 中川駿
出演 河合優実/小野莉奈/小宮山莉渚/中井友望/窪塚愛流/佐藤緋美/宇佐卓真/藤原季節
ナンバー 36
オススメ度 ★★★*
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