体操服から伸びるすらりとした手足、背中まであるサラサラの髪、控えめな笑顔は周囲の空気を和ませてくれる。物語は、そんな少女に一目ぼれした男の10年にわたる恋の軌跡を追う。一方的に片想いしているだけだった。結婚しようと何度も告白した。でも、手を握るチャンスさえ少ししかくれなかった。それでも彼女は相手を傷つけないように気を配るやさしさがある。つかず離れず時に他の女に目移りしながらも、心の底では彼女だけを思い続けている。基本的にちゃらんぽらんな男だけれど、どこか憎めないかわいらしさがある少年が大人になってもほとんど成長しないまま女性遍歴を繰り返す姿は、モテる男の条件とは外見や収入ではなく思いやりとコミュニケーション能力であると教えてくれる。思わず猿語で愛を語りたくなった。
高校生になったボクは床運動する女子・まなみに心を奪われ、友人２人と共に体操部に入部する。顧問の指導の下、体操は上達するがまなみとの距離はなかなか縮まらない。
いつもきちんとした身なりで楚々とした雰囲気を崩さないなまみ。花火大火に誘うときちんと浴衣を着こなして来るが、門限があって途中で帰ろうとする。ボクは彼女とのふたりだけの時間を必死に引き延ばそうとするが、思い通りにはいかない。届きそうで届かないからこそどうしても手に入れたい。まなみのあいまいな態度にますます妄想を膨らましていくボクの、切ない恋心が甘酸っぱくもリアルに再現されていた。
◆ネタばれ注意！ 以下 結末に触れています◆
卒業後はまなみと疎遠になるボク。浪人して進学した大学で映画サークルに入るが、そこでも失恋直後の女子に手を出してひと悶着あったり、あまりの身勝手さから人望を無くして最小限の人数で映画を作ったりする。それでも高校時代に憧れていた先輩の入院を機にまなみと再会したボクはまたモーレツアタックを繰り返す。いつまでたっても大人になり切れないボク、反省などせず永遠に軽佻浮薄なままでいてほしかった。こんな男でも生きていけるほど世の中はぬるま湯だとを証明するためにも。
監督 川北ゆめき
出演 青木柚/中村守里/伊藤万理華/宮崎優/新谷姫加/菊地姫奈/ 藤枝喜輝/下川恭平/日下玉巳/オラキオ
ナンバー 123
オススメ度 ★★★★
