こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハンガー・ゲーム0

青臭い正義感など判断を鈍らせるだけ。信頼や友情も相手が役に立つ時だけ成立する。サバイバルゲームの中では、信じられるのは自分のみ。物語は、没落貴族の跡取り息子が一族の名誉を復活させるためにのし上がっていく姿を描く。一応、支配階層に属し名門アカデミーに通っている。卒業試験ともいえる課題は隷属地域から選ばれた殺戮バトルのプレーヤーの相棒兼参謀となり、プレーヤーを勝たせること。だが彼とタッグを組むのは歌が特技のひ弱な少女。それでも、少女に礼を尽くし、知恵を絞り、ルールの盲点を衝くことで、彼は少女を勝利に導いていく。だが、純粋さは次第に大人たちの思惑によって少しずつ汚されていく。豊かな金髪を持つ主人公が坊主頭になる。その変貌は過酷な運命を選んだ覚悟がにじみ出ていた。

ハンガーゲームのプレーヤー・ルーシーの教育係となったコリオレーナスは、他の教育係がプレーヤーを見下す中、ルーシーを手なずけるために彼女を駅まで迎えに行く。

上流階級の子弟である教育係の若者たちはプレーヤーたちを文字通り駒としか見ておらず、命令するばかり。一方で、コリオレーナスはルーシーに敬意を示し、自分たちは運命共同体であることを理解させ協力を勝ち取る。弱い立場の者の気持ちに共感を示し、その思考回路を理解する。闇雲に弾圧するのではなく飴と鞭を使い分ける。それは支配階級が身に着けるべき理論であるとコリオレーナスは学んでいくのだ。最初は反抗的だったルーシーが次第にコリオレーナスに恋心を抱いていくが、その過程は、守られていると思わせて搾取するのが格差社会を統治する秘訣であると教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ハンガーゲーム優勝後、ルーシーは出身地区に戻り、治安維持部隊に入隊したコリオレーナスもルーシーの地元に赴任する。折しも反乱の機運が高まり、コリオレーナスは住民を取り締まる立場になる。擾乱は出世のチャンスとばかりに暗躍するコリオレーナスの瞳が光る。そこには権力に魂を売った者だけが持つ妖しさが宿っていた。

監督     フランシス・ローレンス
出演     トム・ブライス/レイチェル・ゼグラー/ピーター・ディンクレイジ/ハンター・シェイファー/ジョシュ・アンドレス/ジェイソン・シュワルツマン/ビオラデイビス
ナンバー     231
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
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