こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

わたしの幸せな結婚

身についているべき能力がないがゆえに、庇護者となるべき母を亡くしたがゆえに、少女は自由を奪われ家事労働を屈辱的に強制されている。物語は、不幸な生い立ちのヒロインが、気難しいが強力な能力を持つ高貴な男に嫁ぎ、幸せを追求していく姿を描く。長年、下女のように扱われたせいで、自己評価は著しく低い。常に夫の顔色を窺い、すぐに謝罪の言葉を口にする。それでも働き者の彼女の日常を知るうちに、夫の接し方も変わっていく。自動車等の科学文明が浸透し始めてはいるが、まだまだ身分制度や男尊女卑的な考え方が色濃く残っている時代、古い価値観に染まりそこから抜け出す術を持たないながらもあくまでも健気に “女の本分” を全うしようとする彼女の生き方は、もはや絶滅危惧種というより絶滅種。そのいじらしさが愛おしくなる。

異能の家系・斎森家の長女・美世は、若くてして特殊部隊長を務める久堂と婚約、彼の屋敷で身の回りの世話をする。帝都では災いが頻発、多忙となった久堂を美世は支える決意を固める。

子供のころから屋敷内に留め置かれ街に出たことがなかった美世は、久堂との初めての外出に心を躍らせる。女中のゆりえに化粧をしてもらい小ぎれいにおめかしして、にぎやかな商店街の呉服店で反物を選んだりする。異能者ではないけれど高位の異能者である自分に誠心誠意尽くしてくれる美世の人生を久堂が理解しようとし、氷のように冷たかった物腰がいつしか柔らかくなっていく過程は、真摯な思いは必ず相手に伝わると訴える。美世をいじめる異母妹・香耶を演じる高石あかりがとてもキュートだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

美世の出生の秘密を探るうちに、実は美世こそが最高の異能者である可能性が出てくると、展開は一気に加速する。様々な災厄が宮廷や街に降りかかり、それらを退治するために久堂は闘わなければならない。そして美世の異能の発現。20世紀初頭の風俗に現代的なヴィジュアルを加えた映像は懐古主義と最先端がうまくマッチし、独特の風合いを持つ世界観に仕上がっていた。

監督     塚原あゆ子
出演     目黒蓮/今田美桜/渡邊圭祐/大西流星/高石あかり/小林涼子/山本未來/山口紗弥加/土屋太鳳/火野正平/石橋蓮司
ナンバー     50
オススメ度     ★★★


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