こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ノック 終末の訪問者

バーで語り合っていると酔っぱらいに絡まれる。両親に交際相手を紹介すると祝福ではなく落胆される。養子の面接に行くときも事情を偽り、“傷もののマイノリティ” しか斡旋されない。多様化を叫ばれて久しい米国でもまだまだ根強く残る偏見が当事者の視点でリアルに再現されていた。物語は、人里離れた小屋に逗留するゲイカップルのもとに現れた4人の狂信者の葛藤を描く。狂信者は、いけにえを差し出さなければ人類は災厄に見舞われ終末を迎えるという。そんなアホな話はないとゲイのふたりは拒絶するが、リーダーが予言した通りの天変地異が起こる。そして彼らはそのビジョンを見たという。突然救世主に指名された男たちと、彼らを説得しようとする4人組の駆け引きは圧倒的にスリリングだった。

武器を持った4人組の男女に押し入られ椅子に縛り付けられたエリックとアンドリュー。4人組のリーダー・レナードは、彼らがここに来たとてつもない理由を語り始める。

天啓によって自らの使命を知った4人組はふたりを説得するために己の命を差し出す覚悟ができている。ふたりがビジョンによる予知を否定し犠牲を断るたびに、4人組のメンバーは儀式めいたやり方で1人ずつ命を絶ち、自分たちの本気度をふたりに示す。その直後に人類は世界規模の大災害に見舞われる。偶然では済まされない。神が怒っている。それでも、それを食い止めるためになぜ自分たちのうちの一人が死ななければならないのか。アンドリューはあくまで拒絶を通すが、頭部への打撃が何らかの霊感を刺激したのだろうか、エリックは4人組の言い分を理解しようとする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

“人は見たいものだけを見る” とか “見たものをそのまま信じるな” というような映画的トリックで観客の意表を突こうとしているのではない。TV速報は偶然と言い張るふたりも、頭上で航空機が墜落し始めるとレナードの言葉を認めざるを得ない。命がけで守りたい人がいる。本来美しいはずの「自己犠牲」をホラーに昇華する、そのひねくれた感覚は新鮮だった。

監督     M・ナイト・シャマラン
出演     デイブ・バウティスタ/ジョナサン・グロフ/ベン・オルドリッジ/ニキ・アムカ=バード/クリステン・ツイ/アビー・クイン/ルパート・グリント
ナンバー     66
オススメ度     ★★★


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