こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ノートルダム 炎の大聖堂 

アラームが鳴った。新人警備員は上司と担当者に知らせた。上司は誤報と答え、担当者はおざなりに確認するだけ。木造部分でくすぶりだした火はやがて屋根裏に広がっていく。物語は、世界的歴史建造物で起きた火事の一部始終を追う。現場を確認するためには何百段もの狭い螺旋階段を上らなければならない。観光客を落ち着かせ避難させなければならない。市庁舎からも煙が見えている。消防車は夕方の帰宅ラッシュに邪魔される。やっと消防隊が現場に到着し消火活動を始めるころにはすっかり延焼し、壮麗なゴシック建築は炎に包まれている。敷地内の禁煙を徹底すべきだった。消火器の使用法を訓練しておくべきだった。電気配線のメンテナンスをきちんとすべきだった。様々な反省点を浮かび上がらせつつ、映像は残酷な劫火をリアルに再現する。

パリ・ノートルダム大聖堂で火災が発生、消防の精鋭部隊が駆けつける。狭い通路、急な階段、施錠されたドアなどに苦労しながらも上層階にたどり着くが、溶けだした鉛がホースに穴をあける。

ベルサイユ宮殿にいた宝物庫の責任者は急ぎパリに戻ろうとするが電車はホームを出た後。聖遺物であるキリストのいばら冠だけは何としても守らなければならない。パリにたどり着くも道路は渋滞、レンタル自転車に乗るが現場近くで警官に足止めされ、自分が宝物庫の責任者と言っても信じてもらえない。このあたりの警官の対応は、この機に乗じて撮影を企む悪質ユーチューバーなどに対する規制なのだろう。“専門家が何百人も名乗り出る” という言葉が現実的だ。建物は再建できるが宝物の消失は絶対に避けたいという必死の思いが伝わるエピソードだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

まだ鐘楼は倒壊から救えると判断した消防は決死隊を募り送り込む。燃え盛る炎の中で懸命に放水する姿は自己犠牲をいとわぬ者の美しさにあふれていた。屋根から下りられなくなった猫を助けてくれと消防に通報する老女がいるが、非常時にも自分のことしか考えない愚か者はどこにでもいるのだと妙に感心した。

監督     ジャン=ジャック・アノー
出演     サミュエル・ラバルト/ジャン=ポール・ボーデス/ミカエル・チリニアン
ナンバー     67
オススメ度     ★★★


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