こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アステロイド・シティ

「目覚めたければ眠れ」。中途半端な覚醒や浅い眠りからでは現在を、そして未来を劇的に変えることはできない。何も知らず何も知らされない状況から衝撃的な変化を体験するからこそ自己の中に革命が起きるのだ。物語は、宇宙人来訪の事実を隠ぺいするために政府から厳重隔離された町の人々が自由を求めて闘う姿を描く。たまたま天才少年少女が集まっていた。彼らはまだ十代なのに、最先端の科学に触れ、理解して、発明する才能を持っている。その勇気と行動力は、封鎖するために送り込まれた軍人たちを翻弄する。そして、司令官相手にも一歩も引かず米国民の権利を訴える法知識と雄弁さも持っている。パステル調の書割で再現された建物や砂漠の風景はファンタジックな世界観にいざなってくれる。

隕石落下による巨大クレーターが観光名所になっている町に、優秀なティーンエイジャーたちとその家族が招待される。夜、天体観測会中にUFOが飛来、エイリアンが隕石を持ち去る。

特に攻撃的な意図はないエイリアン。ただ自分たちの存在をアピールしたかっただけにも見え、写真家がカメラを向けるとポーズを取ったりする。だが、この事実が連邦政府に伝えられると、パニックを防ぐために大統領令で「なかったこと」にされる。目撃者全員が厳しい取り調べを受け、夢か幻覚を見たと無理やり納得させるまで洗脳のようなことまで行われる。高圧的な軍人を前に、若者たちはこの事実を外部に伝えようと画策、見事な連係プレーで世間に公表する。堂々と裁判を受ける権利を訴える少年の姿は、米国の人権意識を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

エイリアンの写真は世界中の新聞のフロントページを飾り、政府としては封鎖を解かざるを得ない。登場人物がだれひとり高揚感に浸らない民主主義の高らかな勝利、しかしそれは闘って勝ち取らなければならないとこの作品は教えてくれる。ただ、メタ構造に必然性はなくストーリーの流れを阻害しているだけ。それも含めてウェス・アンダーソンの味わいとはわかっているのだが。。。

監督     ウェス・アンダーソン
出演     ジェイソン・シュワルツマン/スカーレット・ヨハンソン/ トム・ハンクス/ジェフリー・ライト/ティルダ・スウィントン/ブライアン・クランストン/エドワード・ノートン/エイドリアン・ブロディ/リーブ・シュレイバー/ホープデイビス/ホン・チャウ/ウィレム・デフォー/マーゴット・ロビー/ジェフ・ゴールドブラム
ナンバー     164
オススメ度     ★★*


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